先行して改善していたアメリカ株の投資家の市場心理に、9月にアメリカ債や日本株市場などのセンチメントはやや近づいたとみられるが、この動きは、それ以外の金融市場にまでは広がっていない。アジアなど新興国株は9月中旬をボトムに下げ止まったものの、年初からマイナス5%とアンダーパフォームしている。
中国は財政政策が効果を発揮している兆候
高インフレの多くの新興国経済は通貨安への対応を余儀なくされているが、アメリカからの関税引上げの影響を受ける中国はインフレ率が安定する中、金融緩和、財政拡張が行われており、依然安定成長を保っている。
実際に、夏場から財政政策を発動し、7月から鉄鉱石価格が上向くなど、中国の財政政策の効果が出ている兆候がある。中国の金融財政政策発動が拡大して、関税引き上げの悪影響を相殺させ、同国経済が安定成長を保つことが、2018年停滞が続く新興国株などが、先進国株などに追いつく1つの条件になるだろう。関税引き上げの悪影響を相殺する規模で、財政・金融緩和政策が発動されるかは当局の判断次第だが、当社の同僚のエコノミストは「期待が持てる」と判断している。
ようやく上昇した日本株の今後については、結局、2018年の金融市場を左右するアメリカ株市場次第ではないか。またアメリカ株については、目先は、11月初旬に結果が判明する議会の中間選挙が注目される。中間選挙は接戦となっているが、現在のトランプ大統領の支持率を踏まえれば、民主党が下院で多数派を獲得する可能性が高まっている。
当社では、仮に民主党が上院で多数を獲得するなど、議席を大きく伸ばすリスクシナリオを25%程度の確率で想定しており、この場合政治情勢が一段と混乱するため、好調なアメリカ株が調整するリスクがある。
2018年末にかけて株式市場などのリスク資産は、中間選挙を控えるアメリカ、大統領選挙があるブラジルの政治情勢に加え、中国において金融財政政策が発動されるかどうかなど、米中貿易摩擦以外のファクターによって、春先のようにボラティリティが高まる可能性がある。
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