エクセルで「理論株価」を割り出す最強の方法 経営数字を丁寧に当てはめれば答えは出る
しかしこのアメリカ理論には3つの問題点がある。1つ目は明らかに投資家側からの見方に偏っていることである。つまり経営との結びつきが弱すぎることである。
2つ目はFCFというたった1つのデータ(たとえば上の100億円)だけを使っている。そのためここでの“決め手”は割引率になってしまう。
そして3つ目は、そもそもFCFというパラメータ自体を使っていることにある。FCFは営業C/Fから投資額を引いたものである。投資とは「経営者が事業のための財産を買うこと」である。これでは「投資をあまりしない経営者の会社の株価が上がる」ということになってしまい、経営者側そして株主から見ても納得がいかない。
株主が金を出したのは、経営者がこの金を投資して財産を買うためであり、それによって金を増やすことを期待している。しかも日本的に考えれば「金を使うこと=投資」こそが経営という仕事の第1テーマである(決して投資を減らして金を貯めていくことではない)。さらには経営者にはその受任期間があり、経営者の成績を株価としてとらえるなら、「無限のFCFを足す」というのはどう考えてもおかしい。
株価をシミュレーションして経営計画を策定
そこで私のやり方は、これを変形した企業価値モデルをコンサルティングに使っている。このモデルを使う主力シーンは、長計(長期経営計画)、中計(中期経営計画)という経営計画を作る時である(株のマネーゲームをやる時ではない)。
まずは「株価」をシミュレーションする時の業績パラメータを「営業C/F」とする。そのうえで計画対象期間を決める。長計なら10年、中計なら3~5年が普通である。ここでは「5年」としよう。
このモデルは「現在の株価」は純資産(=株主資本=全株主が持っている財産)をベースとするという仮説を持ち、「営業C/F」が未来の株価(=企業価値)のパラメータ(正確に言うと「株価を上げるパラメータ」)と考える。
つまり純資産という現在の株価に「将来増える営業C/F(ここでは5年)分が上乗せされて、未来の株価が計算される」と考える。そして投資家は未来の株価をゲームの指標として売買し、経営者はこの未来の株価を計算して(=営業C/Fを計画して)投資家に約束する。
営業C/FにはDCFを使う。そしてこのDCFに5年後の純資産(=DCF)を積み上げる。すなわち5年後に純資産を売却してプラスの投資C/Fを得ると考える。こうして企業価値を計算する。
このモデルを使って経営計画が遂行された時の株価をシミュレーションし、この結果を現在の株価と比較して、経営計画の見直しなどを行う。
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