エクセルで「理論株価」を割り出す最強の方法 経営数字を丁寧に当てはめれば答えは出る

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これはM&Aの世界で生まれた「企業価値」という考え方をベースとしている。企業価値とは「企業の価値を金額で表すといくら」ということであり、これを発行済株数(その会社が出している株の数。株主が企業価値を株数に応じてシェアしていると考える)で割ったものが理論株価である。理論株価はその企業価値を計算した人が予測した「将来の株価」(将来自分が売った時の株価。売れるはずの株価)である。

たとえば、ある会社の企業価値が1000億円と計算され、その会社が1億株発行しているなら、理論株価は1000円となる。つまりいずれは1000円になるということである(計算した人はそう予測している)。ここで今の証券市場で株価が800円なら買い、1200円なら売れば、「もうけ」が200円出る(はずである)。

まずはこの企業価値をどうやって計算するかである。

アメリカンモデルではFCF(フリーキャッシュフロー)をベースとして計算している。

FCFとは事業により増減した現金である営業キャッシュフロー(営業C/F)と、投資によって増減した現金である投資キャッシュフロー(投資C/F)の合計額を指す。ただし、投資キャッシュフローは金を使うため、基本的にはマイナスとなる。

株主はこのFCFをいずれは手に入れることができると考えている(会社は株主のものであり、「増えた現金=FCF」はすべて株主のもの)。そして「FCFを無限に足したものを企業価値とする」という理論である。こうしてマネーゲーム側はFCFをベースとして株価を考え、経営側は株価を上げるべくFCFを上げる努力をするというものである。

しかしFCFを無限に足せば企業価値は無限大になってしまう。ここにDCF(割引キャッシュフロー法)とともに無限等比級数という数学を使っている(アメリカは経営や経済のモデルに数学を本格的に使っている)。DCFとはディスカウント・キャッシュフローの略であり、時間の経過とともに金の価値が変わっていくことを考慮したものである。

バリュエーションを用いた企業価値の算定手法

「時間の経過とともに金の価値が変わる」とはどういうことか。たとえば、「今100万円もらうのと、5年後100万円もらうのとでは、どちらがいい?」と聞かれたら、今もらったほうがいいと答える人がおそらくほとんどだろう。ということは、今の100万円のほうが、5年後の100万円より価値が高いということだ。したがって、将来の金の価値は、現在の金の価値から割り引いて考えなければならないのである。なお、この時の割引の率のことを割引率という。

一方で、数列とは数を並べたものであり、そのうち等比数列は一定の数(r)をかけていくものである。したがってa、ar、ar2(rの2乗)、ar3(rの3乗)……と表現できる。これが無限に続くものが無限等比数列であり、この数列の数字をすべて足していくのが無限等比級数である。この和はrが1より小さければ無限大とはならず、ある値に収束する。 この理論をバリュエーションに用いる。

ある会社が毎年一定のFCF(100億円)を出しているとする(これからも出していくと考える)。これをDCFでとらえ、その割引率を5%とした時の企業価値(V)を考えてみる。

計算すると、企業価値は2000億円になる。ここでこの会社が1億株発行していれば理論株価は2000円となる。

次ページアメリカ理論に3つの問題点
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事