安室奈美恵と知事選に映る沖縄人の世代格差 彼女を誇りに思う若者がとらえる基地問題

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話を聞いた若者に共通しているのは、「沖縄が差別されている」という実感に乏しいことだ。米軍基地も生まれたときからそこにあるから、問題意識さえ希薄で、むしろそのことで対立することに嫌悪感を抱く。

そういった彼らにもアイデンティティがないわけではない。基地問題に投影されないだけで、沖縄県人として地元を活性化して前向きに生きていくマインドを強く感じる。

琉球新報が9月19日付で、辺野古の基地に関して世論調査の結果を紙面化している。

翁長氏の前の知事である仲井眞氏は、辺野古の埋め立てを承認して基地容認に転じたのだが、その仲井眞氏を退けて知事に就任した翁長氏は亡くなる直前、この承認を撤回する意向を示し、最終的には沖縄県が彼の遺志を継いで撤回した。この事についての是非を尋ねている。

翁長氏の下した撤回の判断を「強く」「どちらかといえば」を合わせて7割が支持しているという。要するに7割の県民が基地反対を意思表示したわけだが、問題はその年齢構成だ。「強く支持する」の割合が高かったのは70代で、60代、80代、50代、30代、40代の順だが、逆に「全く支持しない」で最も高かったのは20代で、30代、40代と続く。

つまり若くなればなるほど、基地への抵抗感が薄れているということになる。

同じ琉球新報の世論調査では、知事選の攻防はほぼ互角となっている。

沖縄の若者たちに芽生えた新しい息吹

9月17日、県庁前の広場で、大学生や20代の若者が主催して翁長氏を追悼する「翁長雄志さんを想う市民の集い――あなたの雄姿を忘れない」の集会が開かれた。

若者が相次いでマイクを握り、彼の残したものを引き継いでいく決意を示した。

若者たちが翁長氏のアイデンティティという言葉から感じ取ったそれぞれの沖縄の誇りに耳を傾けていると、思わず涙が出そうになる。

政治の争いごとから距離を置きたい若者を、私は否定したくない。そこでも、それぞれが己のアイデンティティと向き合っていると思うからだ。沖縄に芽生えた新しい息吹が、翁長氏の提唱したアイデンティティに包含されることはないのかもしれない。だが、彼が保革を乗り越えて意思統一を果たしたように、きっとこの島が特殊な状況と向き合うフレーズがある。そう信じたい。

辰濃 哲郎 ノンフィクション作家

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たつの てつろう / Tetsuro Tatsuno

1957年生まれ。慶応義塾大学法学部を卒業後、朝日新聞社に入社。支局、大阪社会部を経て、東京社会部で事件担当や遊軍キャップ、デスクなどを務める。2004年退社。主な著書は『ドキュメント マイナーの誇り―上田・慶応の高校野球革命』 『海の見える病院 語れなかった「雄勝」の真実』、共著は 『歪んだ権威 密着ルポ日本医師会~積怨と権力闘争の舞台裏』 『ドキュメント・東日本大震災 「脇役」たちがつないだ震災医療』。佼成学園高校で甲子園に出場。慶応大学では投手だった。関連して著書に『ドキュメント マイナーの誇り・上田慶応の高校野球革命』がある。

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