ユニクロ「無縫製ニット」を支える黒子の正体 島精機はアパレル業界の構造を変えられるか

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マッハ(音速)という名称を体現するように衣料の編み立て速度は高まり、かつての1日12着から、50着まで飛躍的に向上した。

このマッハ2XSは欧州ではイタリア、アジアでは韓国、そして富裕層向けの独自商品企画を打ち出し始めた中国の新興SPA向けなど、各国のアパレルメーカーの注目を集めた。

ホールガーメント機の販売台数はマッハ2XS発売前の2014年度の397台から、発売年の2015年度556台、2016年度707台、2017年度の1081台へと急増している。

「労働集約から技術集約に変えられる」

ホールガーメント技術の採用はアパレルメーカー側にもメリットがある。まずは材料費の削減だ。長方形の編み地から型紙に沿って前身頃・後ろ身頃・袖といったパーツを切り取るという裁断工程がなくなり、素材の30%にも及ぶような裁ち落とし部分(カットロス)がなくなる。

また、前身頃・後ろ身頃・袖や裏当て布といったパーツを縫い合わせる縫製工程がなくなり、人海戦術となってしまうミシン掛け作業がなくなることで、省力化ができる。米国や欧州や日本といった先進国を含めどんな地域でも衣料品を量産できるようになる。

「衣料の生産を労働集約的産業から技術集約的産業に変えられるはず」と島会長は語る。

こうした新製品の好調は島精機の業績にも反映されている。2018年3月期は売上高718億円(前期比15.1%増)、純利益112億円(同56.7%増)と過去最高を更新した。

ただ、今2019年3月期は、横編み機生産に必要な部材・部品の調達難、ヨーロッパ向けのアパレルの生産拠点であるトルコの為替相場急落といった懸念材料を抱える。このまま右肩上がりの好調が続くかは、正念場といえそうだ。

石井 洋平 東洋経済 記者

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いしい ようへい / Yohei Ishii

機械・小売り・電機・化学などの業界を担当

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