ユニクロ柳井氏が「グーグル」と手を組む理由 東京に「AIラボ」新設、激化するクラウド競争
「お客さんにとって最適な服とは何か。人それぞれ意見は違う。これまでは(顧客の)情報を収集して分析するのに9割の時間を費やし、分析結果を活かすための仕事には残りの1割しか使えなかった。デジタル変革によって、実際の戦略を遂行することに9割の時間を使えるようにしたい」
衣料ブランド「ユニクロ」「ジーユー」を展開するファーストリテイリングは9月19日、クラウドの活用で米グーグルと本格提携することを発表した。柳井正会長兼社長は記者会見で、グーグルとの協業に寄せる期待を語った。「検索エンジンでも人工知能でもナンバーワンの会社。イノベーションを一緒に起こせるんじゃないかと考えている」。
アジア初、グーグルが開設する“ラボ”
この日、都内で法人向けクラウドサービスのイベントを開催したグーグルは、顧客企業にAIのノウハウを提供する「アドバンスト・ソリューションズ・ラボ(ASL)」を東京に立ち上げることを明らかにした。アメリカのサニーベール(カリフォルニア州)とニューヨーク、アイルランドのダブリンに続いて4カ所目で、アジア太平洋地域では初となる。ファーストリテイリングはその第1号顧客だ。
ASLは、グーグルの研究者やエンジニアが教える機械学習の基礎講座を提供するほか、ラボの利用者のみが入れる同社の施設を利用できる。数カ月にわたって顧客企業がグーグルのエンジニアの協力を受けながら、自社の課題解決で機械学習をどう活用できるかの検証を行う。
ファーストリテイリングとグーグルは、機械学習技術による画像認識を活用した着こなしのトレンド分析や需要予測の取り組みを始めたという。今年7月からは、グーグルが開発したチャットボット(自動応答システム)を土台とする買い物支援サービス「ユニクロIQ」を提供している。
また、クラウドの分析ツールなどを活用し、カスタマーサービスに寄せられる顧客の声や通販サイトの利用動向といったデータと販売実績を組み合わせ、需要を精緻に把握する仕組みを構築する。その先に狙うのは、不要な在庫の低減だ。
ファーストリテイリングはクラウド基盤として、米アマゾン傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)も利用している。「アマゾンもグーグルもいいものを持っている。部分部分で最適なものを考えながら選んでいく」(柳井氏)。