「ハプニング」が前提のキャリア作り 岡崎仁美「リクナビ」編集長×森山たつを対談(3)
やってみないと仕事が合っているかなんてわからない
森山:確かに実地にやってみないと、仕事が自分に向いているかなんてわからないですものね。私が最初に入った会社はたまたま自分に合っていたからラッキーでしたが、ラッキーかアンラッキーかで進路が決まるのはすごく不自然。 特に日本の終身雇用というレールに乗ろうという話になると、一度入社してアンラッキーな人は、30年間ずっと乗り続けなければいけない。それはもう大変です。だから、この「試職」は広まってほしいですね。
――「入っても3年で辞める」とよく言われていた学生の意識が、入る前にインターンを含めて試してみて、できるだけ自分に合った労働環境で長く勤めたいというように、変化してきたということでしょうか?
岡崎:おそらく、そうしたニーズは確実に拡大していると思いますが、まだ学生たちの就職活動において、「試職をしてみよう」という意識が顕在化しているとは言えません。なので、具体的な提案をすれば、「ああ、そういう手があったのか」と気づいて行動が変わり、より自分に合う選択肢が見つかるのではないかと思っています。
森山:今までは、ブラック労働や長いスパンの仕事に対して、学生が抱える不安を解消する方法がなかったんですよね。そこで「そんなに不安だったら、試職プログラムをやってみれば?」と言えば、すごく興味を持って、やってみようと思う人が増えてくる気がします。
ただ、アメリカやイギリスだとインターンの意味合いも変わってきていて、もう会社が教育してくれないから、事前に無給で働いて自分で学んで、そのスキルを売りにして会社に入ろう、といったことになります。
岡崎:試職を「仕事を試す」という意味でとらえると、広義ではインターンシップもアルバイトも全部含まれると思うのですが、最近のトレンドとしては、採用プロセスの中に組み込まれたものが目立ちます。応募者に対して仕事体験プログラムや現地での研修を提供する企業が増えているのです。紹介予定派遣(派遣スタッフとして一定の期間就業した後、スタッフと会社の双方が合意すれば、あらためて社員として就業する仕組み)などを国を挙げて進めていこうという動きもありますがが、学生の意識の中では「試して決める」ことができるポジティブな選択肢として、これをとらえるにはまだ至っていません。