プロレスも格闘技も「猪木」に行きつくワケ タイガーマスクと呼ばれた男が残した功罪

現代は格闘家もモノカキも「売る努力」が求められる
田崎:格闘技の選手というのは、文字どおり命を懸けて戦っています。UFC(世界最高峰の格闘技興行)に出て、勝ち続ければ目もくらむような大金を手にできる。しかし、日本国内の興行だとびっくりするほど、ファイトマネーは安い。
青木:選手はエージェントを入れるようになっているので、そこでギャラを取られるのがデカい。多くの選手が搾取される側になってしまいました。そこがもったいないです。
田崎:みんな強くなることには熱心なのですが、自分をビジネスの対象というか、売り物にするのが下手。だから青木さんは実験的というか、とにかく面白い存在だと思ったんですよね。そんな格闘家はほかにいないじゃないですか。
青木:そう言っていただけてうれしいですね。選手って試合が決まると、その当日の白黒ばかり考えていて、プロモーションをしないんですよ。プロモーションをしない試合って、ファイトマネー以外の良いことがない。人に見てもらえるように事前に一所懸命“焚(た)く”ことをしないとダメなんですよ。