視覚なしで戦うボール競技の知られざる世界

大人になって視力をほぼ失った彼女の戦い方

乙武:ありがとうございます。それでいうと、世間はどうしても障害者と一括りにしがちですけど、先天性四肢欠損の私からすると、視覚障害はまったく別ジャンルなので、健常者のみなさんと同様に素人ということになります。今日はゴールボールのことも含め、初歩の初歩からお聞きできればと思います。

小宮:はい、何でも聞いてください。

言い訳の通用しないゴールボールの世界に没入

乙武:そもそもゴールボールというのは、20年前くらいに日本に伝わってきたばかりの、比較的新しい競技なんですね。

小宮:そうですね。日本ゴールボール協会が発足したのが1994年。私がこの競技を始めたのが2001年で、当時は今以上に盛んとは言えない時代でした。まして日本の女子チームは世界のレベルにはほど遠く、国際試合で勝ち点を取ったことがない状況でしたから。

乙武:ゴールボールが鈴の入ったボールを転がしてゴールを狙う球技であるということは私も理解しているのですが、もう少し詳しく教えていただけますか。

小宮:ゴールボールはバレーボールとほぼ同サイズのコートで行われる競技で、プレイヤーは皆、アイシェード(目隠し)を着用します。1チームの人数は3名。12分ハーフ(前半12分・後半12分)の得点差によって勝敗を争います。

乙武:小宮さんがゴールボールを始めることになったきっかけは何だったのでしょうか。

小宮:もともと小・中学生の頃はバレーボールをやっていました。特に中学ではほとんど休みのないハードな部活だったのですが、視力が落ちてきたこともあり、高校・大学では運動から離れていたんです。その後、就職してから視力が急激に低下し始め、会社を辞めて通い始めたマッサージの学校でゴールボールに出会いました。このときは、視力を失った自分にもやれるスポーツがあるということが、純粋に嬉しかったですね。

視力を失った自分にもやれるスポーツがあるということが、純粋に嬉しかった(撮影:友清 哲)

乙武:なるほど。視力の低下もあって10年近くスポーツから離れていたものの、ゴールボールとの出会いによって再びスポーツができる喜びを味わえたわけですね。

小宮:そうですね。何より、ゴールボールは誰もが目が見えない状態でプレーしていますから、そのフェアな部分が気に入りました。これは言い訳が一切できないということなんです。それまでは生活の中でも、心のどこかで「自分は目が不自由だから」と言い訳できたのが、コートの上では純粋に自分の努力や能力が試されます。

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