東京医科大学では、女性が合格しにくいように入学試験の操作が行われていたことがわかった。8月7日の同大内部調査委員会報告は、贈賄などほかの不正や、今後の対応にも言及しているが、その中から、女性差別に関する部分のみを要約する。
①今年の一般入試の得点を加減し女子合格者を抑制した。 ②操作は2006年から続いていた。 ③関係者は、女性差別の理由を「年齢を重ねると結婚、出産などで長時間の勤務ができないなど、医師としての稼働が低下する」と説明した。
この件の問題を、大きく4つの点から考える。
女性を排除することで長期的に医療の質も劣化
第1に、この差別が医療にもたらす効果である。
関係者が、女性合格者を減らしたがる背景には、大学病院の勤務医の「ブラック」な就労実態がある。過重労働と不規則な就業時間、母性を考慮しない風潮などから、勤務医の仕事は過酷で、特に家庭を持つ女性にとって適合性が低い。この事実は、ひとまず認めよう。
その解決策は、就労環境を改善することにある。言うまでもなく問題は、女性の側にではなく、ブラック勤務の側にある。 この種の問題の解決には、女性の登用を進めることが有効である。女性を増やせば、問題の明確化と解決が進む。さらに女性の発言力が向上して、変革が促進される。このことは多く実証され、異論の余地はないと考えられる。
就労環境が改善すれば、女性のみならず男性にとっても有益で、育児参加などに多くのメリットが期待できる。優秀な人が排除されず、男女ともに余裕ができれば、提供する医療の質の向上に資する。 東京医大は、正反対のことを行った。女性の入学を抑制して問題を伏在化させようとしたのである。これでは、事態は悪化し、長期的に医療の劣化につながる。根底から誤った対応といえる。
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