今日、駅で暴力を振るう者、執拗なクレーマー、暴れるモンスターペイシェントは高齢男性というイメージができつつある。かつては、「怒れる若者」に対し、「分別を示す」のが高齢男性だった。いま何が起きているのか。
まず事例を観察する。
『週刊東洋経済』2016年3月19日号には、席を譲ろうとした中学生に「ふざけるな。(中略)いやいやなことぐらい、わかるのっ!」とからんだ男や、レストラン来店のつど、店長を30分以上「指導」した男の例が挙げられている。いずれも60代くらいとある。
昨年11月のNHK「クローズアップ現代」は、出演者の体験を紹介した。駅ホームで、「若いのに、何を座っているんだ。年寄りのイスだ、譲れ!」と言われた例、薬局のレジで「お支払いはカードでよろしいですか?」と聞いたところ、「待てよ! 不機嫌そうな顔をしやがって、お前の対応はどうなっているんだよ! 何ですぐ謝らないんだ!」と責められた例。また「キレる側」からは、「店員が無愛想なときは、すごく頭きますね。……許せなくなっちゃう、キレちゃうんですよね」という声があった。
尋常ではない高齢者による暴力の増加
粗暴行為の舞台を見ると、まず病院・診療所である。ブログやアンケートによると、看護師のほとんどが、待ち時間、態度、医療内容などに関して、高齢者の粗暴言動を経験している。次いで、駅構内での暴力がある。大手私鉄16社調査(2017年度)によると、加害者の21%が60代以上で、20代の22%に次ぎ2位である。
公的な統計はどうか。法務省「犯罪白書」によれば、わが国の犯罪総検挙数は年間約150万件程度で、減少傾向にある。うち傷害と暴行は逆に増加傾向で、1996年の約2万件を底に、2016年には約4万5000件になっている。男性の割合が90%を超える。65歳以上の高齢者に限っての総検挙数は年5万件弱で2005年以降はほぼ横ばい。主に窃盗の増加により減少していない。高齢者の全体に占める比率は、人口の約27%であるが、検挙数では約3%と低い。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら