こういう人に絡まれたらどうするか。
やり込めれば一時は爽快である。だがこうした手合いは急増している。いちいち争えばいつかひどい目に遭うから、逃げるが勝ちである。失うものが、座席を横取りされる程度なら、あきらめるのが得策である。業務上のクレームはより厄介だが、逃げる方法は知られている。「自己の重要感」欲求への対応は、古くD.カーネギーが、『How to Win Friends and Influence People(邦題:人を動かす)』で、3点にまとめている。
1. 批判するな、けなすな、文句を言うな。2. 真剣に誉め言葉を言え。3. 相手の強い欲求を駆り立てよ。セールスマンのカーネギーは、販売の秘訣として、以上3点を挙げた。害を避けるだけなら、3は不要で、1か2で大抵はかわせる。
だが、お世辞など言って、相手が増長したらどうするか。理不尽さがエスカレートするケースもある。そうなったら、そこで「警察に行きましょう」と切り札を切る。前段の1、2を真摯にやっておくほど、真剣味が増し効果が高い。ただのプライド過剰男なら、これで引っ込む。万が一引っ込まなければ、危険人物である。110番しつつ逃げねばならない。
ラインオフ後の仕事は社会への貢献と考える
さて次に、より根本的な社会的対策を考える。
根本的な政策は、元気な高齢者に適切な場で働いてもらうことである。職場にも家庭にも居場所がない者が大勢いたのでは、社会に良いはずがない。また一方、若者世代の負担の抑制と、経済価値増大の観点からも、勤労は必要である。年金や福祉の財源が枯渇していく中、若者だけが働き、多数の高齢者が無為に暮らす社会など存続しえない。高齢者も社会の利益に貢献が必要で、それは当人の喜びにもなる。喜びがあれば、他人に尊敬を強要し諍う必要もなくなる。加えて、勤労に居場所がある者は、家庭でも愛されやすい。
官民で高齢者の活性化策を考え、高齢者に企業またはコミュニティで働いてもらう努力は始まっている。社会的枠組みの構築は進み、今後も強化されるであろう。
そうなると課題は、当事者が適合できるかにある。意識の問題は大きい。ラインオフ前、40代から自分を知り、特技を磨き、また研修や各種の体験、コミュニティ活動などに参加することは有益である。
高齢からのキャリアでは、人の上に立つ役割を求めてはいけない。プライドや嫉妬心は、特に抑制する必要がある。
嫉妬による不適応の典型パターンは「あの人より、この俺のほうが上でないと絶対おかしい」といった他者比較である。青色発光ダイオードの中村修二博士やNAND型フラッシュメモリの舛岡富士雄博士のような、世界的発明を成し遂げた天才でさえ、社内で不遇をかこったことを思えば、大多数の人は「この俺が!」と息巻いても滑稽でしかない。
自らプライドをマネージできれば、気持ちが前を向く。そうすると、怒りが消え、満足と感謝が生じる。感謝の心境は本人の幸福に極めて重要で、これが目指すゴールである。目指すところが定まれば、自己変革のヒントや体験談は、書籍やセミナーなどで多く見つけられる。
悲観的に見ると、もしこのまま事態が悪化すれば、世代間の深刻な対立のおそれもなしとしない。資産の偏在、年金・医療をはじめとする社会保障負担のアンバランス、年功序列社会などの事情が複合して、将来を担う若者は、ただでさえ不公平感にさいなまれている。高齢者も社会に貢献し、若者の負担を減らす必要があるが、それを怠るばかりか、自ら尊敬を強要し粗暴行為に出るようでは、国を誤る。そんなことをすれば、責めは自らに返ってくる。
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