「キレる60代の男たち」を減らしていく方法

「いい年をした者」の粗暴化が止まらない

ただし、高齢者の暴力について見ると、動きが尋常でない。20年前は年間300件程度であったものが、1万3000件に急増している。全人口における比率も、1%強から28%強に上昇している。

「高齢者が増えただけではないのか」という疑問に応えて、人口構成変化を補正するため、高齢人口を分母にした暴力犯罪率を示す。結果は衝撃的で、高齢者10万人当たりの暴力犯罪は20年で10倍以上に増え、なお直線的に増加中である。

犯罪にまで至るのは氷山の一角と考えられるので、多く見られる単なる粗暴行為もこの間増えていると推測できる。

有り余るプライドが高齢者の怒りの原動力になっている。彼らの発するメッセージは「尊敬の強要」である。これを理解する手掛かりを、最近の「敬老者が乗車します」事件に見ることができる。

この事件は、花見に行く老人の団体が電車の席に「次の駅から、敬老者が16名乗車します」と書いた紙を置いて、席を確保しようとしたというもので、大きく報道された。このような席取り自体に加え、その言葉遣いも見慣れないものである。

この文章に、当事者の意志が表れている。「老人が乗車します」が正しいのだが、それでは自分たちへの敬意が足りないと感じる。文法を無視してでも、「お前らが敬うべき人が乗るんだ」と言いたくて、「敬老者が乗車」となったのである。本件は幸い、批判を受けて所属する老人会から再発防止が表明され穏便に済んだが、この「尊敬強要」の心理が、怒れる高齢者の問題にはつきものなのだ。

本来は高齢になると寛容になるはずだが

さて、原因分析に先立ち、人はなぜ長生きなのかを考えよう。一般に哺乳類は繁殖年齢が終われば寿命も終わる。だが人類においては、女性は閉経してからも長期間を生きる。男性も多くが繁殖活動を停止した後も長く生きる。異例な長寿のメリットは何だろうか。

まず、孫の養育である。子以上に孫がかわいい感情は普通に見られる。人間は成育期間が長く、子育て負担は大きい(「「葛藤」の本能を経営の意思決定に応用しよう」を参照されたい)。祖父母が長生きして育児に協力すれば、子孫を残す確率が高まる。

もう1つの役割は集団淘汰への対応である。生き字引のような老人が、生活の知恵を伝え、諍(いさか)いを調停すれば、集団存続に有利である。人類の共同生活において、年の功には有用性があった。高齢個体は利他的行動を通じて集団に貢献していた。

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