2016年のレポート「出産女性のケアにおける助産師主導の継続モデル(筆者注:決まった助産師がひとりもしくはチームで診続ける出産)と他のモデルの比較」によると、英国、オーストラリア、カナダ、アイルランドなどで発表された信頼性の高い研究15件が検討された結果、助産師主導の継続ケアには悪いところが見当たらないとされた。そして大多数の研究が「満足度が高い」と報告していて、医療費削減になる傾向も見られた。
助産師主導の継続ケアは、硬膜外麻酔の使用、子どもがなかなか出てこないときに器具を使って引っ張り出す吸引分娩・鉗子分娩など医療行為が減るという特徴もあった。また37週未満の早産、24週前後の胎児死亡と新生児死亡の割合が減る傾向があった。
早産、死産が減る理由ははっきりわかっていないが、筆者が推察するに、LMCのような親しい専門家が身近にいれば、何かあったときに質問や相談がしやすく、異常の早期発見や予防医療に有利なのではないだろうか。レポートは「助産師主導の継続モデルによるケアを提供すべきである」という結論で結ばれている。
WHOでも「助産師の継続ケア」を推奨
2018年2月には、世界保健機関(WHO)が、出産ケアの新しいガイドライン『WHO勧告:肯定的な出産体験のための分娩ケア』で「助産師の継続ケア」を推奨した。この数年、こうした権威ある組織が、相次いで助産師の継続ケアを推奨する方向に動いている。
その流れの中で、もう20年以上も国民が助産師の継続ケアを享受しているニュージーランドは、先達として関係者から注目を浴びている。
ニュージーランド国民が助産師に寄せる信頼の裏には、助産師たちのたゆまぬ切磋琢磨もある。ニュージーランドでは、助産師であるということは大変な努力を要する。脱落する学生のほうがはるかに多い過酷な教育に耐えた人しか助産師資格を手にできないし、仕事に従事するために必要な実践免許の期限はわずか1年という短さだ。
さらに3年に1度は大掛かりな更新があり、診療記録を提出しなければならない。評価員は、母親のフィードバックも加味して適切なケアが行われているかどうかをみる。ちなみに日本では、医師も助産師も、免許の更新制度はない。
ところが今、ニュージーランドの助産師は危機を迎えている。助産師の報酬があまりにも安くて、助産師不足が始まっているのだ。
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