「教室のエアコン設置論」よりも重要なこと エアコンをつけるだけなら「非効率のまま」だ

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一方、体育館の場合はどうすればいいだろうか。現状の体育館は、たいていの場合、鉄板の屋根が乗っかっているだけだから、文字どおり、熱が上から降ってくるようなものだ。真夏なら鉄板の温度は50℃を超え最悪70℃近くになっている場合が多い。体感温度は{室温(気温)+放射温度}÷2 で表せるので、仮に室温30℃、体育館の屋根が70℃になっていると体感温度は{室温30℃+70℃}÷2=50℃ となる。生徒が「体育館はまるでサウナのようだった。」というのは正しいのである。

屋根の上に断熱層を設け、そのうえに屋根をかける

現状の体育館を、断熱改修するには、内部からではなく、今ある屋根の上に断熱層を設け、さらにその上に屋根をかける方法が有効だと思われる。とにかく人の体感温度を上げてしまう表面温度(放射温度)を下げることが重要なのだ。これだけで熱の出入りは相当抑えられる。エアコンはそのうえで設置すれば良い。

なお、今回はエアコンが効くための断熱化の話をしてきたが、この話は地球温暖化防止と同じ土俵のうえでされるべきものだ。地球温暖化防止のために日本は二酸化炭素の排出を全体で26%減らさなければならない。経産省の試算によると建築分野では、全体よりも多い40%の削減が求められている。

ここで総合的に考えれば、必要なのはまずは断熱である。断熱によって、暑さ指数の放射温度が劇的に下がるからだ。そのうえでエアコン設置をすべきだ。これらはZEB(ゼロエネルギービルディング)や高断熱高気密の建物をつくる技術の応用でもある。きちんと温熱シミュレーションをして、効果を予測して行うべきである。

オガールの一角にある賃貸住宅オガールネスト。真夏なのに気温35℃でも室内はエアコンをつけずに23℃だったという。高断熱高気密住宅のなせるわざだ(筆者提供)

さて、この記事を書いていたところに、前出の岡崎氏が企画して創った集合住宅(賃貸アパート)である「オガールネスト」に住むある住民が、フェイスブックで投稿しているのを見つけた。

「オガールネスト。快適すぎて外に出られない……。本日16時で外は35℃。室内は1度もエアコンつけずに23℃。信じられないけど、本当の話」

高断熱高気密で、日射遮蔽がうまくいっていれば、熱が室内に入ってこないから上記のような環境になるのだ。別に窓を締め切っていても、熱交換の換気扇があるから、規定の換気はもちろん行っている。住んでいる住民にとっても、今まで体験したことないような事態にびっくりしているようだが、高断熱高気密の住宅はこれほどまでに高性能なのである。

よく「高断熱高気密では、熱がこもるのではないか」と言われる。だが熱が入らない工夫がされているので熱も入らない。エアコンも良く効く。睡眠時はおそらくスイッチを切っても、(熱の出入りがないので、一定温度なので) 安眠できる。そういう建物を広めることがこれから真剣に求められるのだ。

竹内 昌義 建築家、大学教授

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たけうち まさよし / Masayoshi Takeuchi

1962年生まれ。東京工業大学大学院修了。1991年に竹内昌義アトリエを設立した後、1995年に設計事務所「みかんぐみ」を共同設立。2001年からから東北芸術工科大学(山形県山形市)の建築・環境デザイン学科准教授となる。2008年から同教授。山形エコハウス(山形県が事業主体、環境省の21世紀環境共生型モデル住宅整備事業の一つとして選定)をきっかけに、環境・エネルギーに配慮した住宅を設計、紫波町オガールタウンの監修などを手がける。『図解 エコハウス』『原発と建築家』『あたらしい家づくりの教科書』など著書多数。

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