こうした優れた断熱効率を誇る建物は日本にはほとんどない。ぜひ普及させたいところだが、そう思っていた矢先、この酷暑によって愛知県豊田市の市立梅坪小学校で1年生の男子児童が熱中症で亡くなるという痛ましい事故が起きた。これをきっかけに学校へのエアコン設置が再び日本中で大きな問題になっている。地球温暖化で以前よりも確実に月の平均気温が上がってきているのに、対応が遅れてきたというのが実態だろう。多くの自治体は財源不足を理由にエアコンの設置が遅れているが、はたしてそれで良いのだろうか。
エアコン導入議論で「精神論」はありえない
アメリカで提案された「暑さ指数」(WBGT)をもとに考えてみよう。WBGTは単位こそ℃だが、室温と完全には一致しない。湿度、放射温度、温度を総合的に勘案して出す指標だ。環境省がHPで掲げる表はややわかりにくいが、WBGTが31℃超、参考値として室温35℃超なら運動は中止。WBGTが28℃~31℃の範囲、参考値として室温31℃~35℃なら「運動に関して厳重警戒」などと規定している。
これらの値は運動における環境省の基準だが、教室の中の学習環境も同じだ。この表からは、たとえば外の気温が34℃なら、学校の建物の内部はなかなか下げられないので、体育館だけでなく一般の教室すら熱中症になる可能性があると言える(一般の職場WBGTの考え方を適用すれば室温28℃でも熱中症になる可能性がある)。
夏の暑さがここまでくると、学校などでは温度管理は我慢や根性の問題ではなく、人権問題や環境に対する責任問題のはずだ。ひとことでいえば、状況を放置して児童の健康や生命が侵された場合、法的な責任を負う可能性があるはずだ。それでもエアコンの設置方針はそれぞれの自治体の考え方によって大きく差がある。ないところは「自分が子どもだった時にはなかった」「少しくらい暑くても我慢すればいい」などの精神論を掲げる首長がなおいたりする。だが、さすがにこの酷暑で、エアコンに関しては今後早急に導入されていくことになるだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら