こうした教室でのエアコン導入論議のなかでエアコン設置が加速化するのは理解できるのだが、筆者は、実は「今のままの貧弱な温熱環境で、やみくもにエアコンを導入することはいかがなものか」と思ってしまう。
つまり大半の教室は今のままでは「ものすごく暖まりやすく、冷えやすい」環境なのだが、それを改善しようと「電力を使った力尽くでのパワー」で冷やしきる設備を入れるなら、その設備容量は過剰なものになり、予算も無駄に大きく膨らむ。そういう状況が生まれかねない。
エアコン導入と同様、いやそれよりも大事なのは、建物の躯体の環境性能、すなわち断熱性能を上げることだ。現在設計中あるいは工事中のものに関しては 早急に対応したほうがいい。後から改修するとなると、手間も予算も大きくかかるからだ。
とはいえ既存の建物にも早急に抜本的な対策を施さねばならない。 そうすれば結局はエアコンの容量も最適化され、予算も抑えられるはずだ。本来なら断熱材の補強工事を天井、壁、窓と行い万全を期すのがいいが、そうも言っていられない。ここでは教室と体育館に分けて、最適なコストや施工性を勘案しながら、最低限すぐにやるべき対策を提案してみたい。
教室の断熱性を高める場合は、屋上から
まずは教室の場合だ。 最上階の屋上(屋根)を断熱すべきである。夏の日射は上からやってくる。まず熱の侵入を抑えることが大事だ。これは冬も有効に効く。熱は上昇気流で上に逃げるからだ。そのどちらにも効くのがこの屋上の断熱である。それができたら、次に壁の断熱もしたい。また、学校は窓が多い建物ある。建築基準法が決められた頃(1950年)では、設備に頼らず採光するため、学校は、窓の大きさをほかのどんな建物よりも大きくする(床面積の5分の1以上)と決められた。これが断熱性を低める原因の1つになっている。
それゆえ、窓にいかにして熱を入れないかが重要な課題になる。おそらく大体の窓は南側を向いているので、まずは窓をペアガラスや樹脂サッシに改修することが望まれる。予算に余裕があれば、外付けのブラインドが最も有効だ。もちろん、庇などの設置も有効である。もし予算がなければ、「グリーンカーテン」や「よしず」も有効である。とにかく、 窓に熱を入れないことだ。最も簡易に済ませるのであれば、断熱ブラインドという手もある。
これらを何も同時にやる必要はない。まずは一教室ずつ修繕して、「断熱改修をした教室」と「していない教室」を比べ、効果を実感する環境リテラシーを啓発することも教育の1つであろう。
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