なぜカープは東京から「お金を奪える」のか 大都市にお金を持って行かれない秘密とは?

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その広島において、こういうビジネスが出てきている、という点に注目していただきたいのです。偶然かもしれませんが、広島発祥の企業は皆さん、割と元気です。世の中「売り上げ3割減」なんて当たり前の企業があるなかで、みなさんしっかり売り上げを伸ばしておられます。その中でも、たとえば、ダイカストの大手メーカーであるリョービ(RYOBI)さんはテレビに写るバックネットのところのフェンス広告を「占拠」しておられ、全国発信の役に立っています。

グッズに関して言うと、広島にいると(東京の人間からみると)とんでもないコラボ商品がいくらでもあります。地元・広島の会社の製品は当然ですが(もう、みそから海苔から牛乳まですべてカープバージョンの商品が販売されている)、たとえば大正製薬の「リポビタンD」など全国区の商品が、すべての球団のロゴ入りモデルを販売しているはずなんですが、カープのバージョンしかワタクシ、見たことがありません。これは広島のコンビニ!で普通に売っているのです。

カープが「ほぼ100点満点」といえる理由

キリンホールディングスの「一番搾り」や、アサヒグループホールディングスの「アサヒスーパードライ」もカープバージョン。昨年からサントリーの「黒ウーロン茶」もついにカープバージョン(菊池涼介選手起用)を販売開始しました。

全国で売っている商品の「カープバージョン」が次から次へと登場している。これは実は昔からあるのですが、変わったところではゴーフルで有名な神戸風月堂さんなんかも出してますね。そういう他地域からのお金がロイヤリティーという形でカープに入り、それが利益の源泉となって、選手の年棒を支えている……というほかの球団ではできない構図が広島カープにはある。まさに市民球団といわれるゆえんであります。

そしてわれわれが地方再生において最も重要視していること……いかにその地域のマネーを外に持っていかれないか、いかに外の地域からマネーを「収奪」するか……という点においては「ほぼ100点満点」と言っていい成果を上げている。ただ、リポビタンDを飲んでもそれは東京の大正製薬が儲かるだけですが、広島はカープのロイヤリティーという形で取り返せるわけです。

どのくらいのものがあるかというのはこの地元の百貨店の福屋さんのHP が参考になるかもしれません。もちろんここに出ていないものもたくさんあるので、そのレベルはもう「ビョーキ」といっていいかもしれません。

偶然かもしれませんが、カープに引っ張られ、広島所以の企業は業績も好調な所が多いのです。まさに、景気は気ですから、カープが元気であることが会社の従業員のみなさんの活力になったり、直接的にはカープの応援という形で町中が盛り上がり、企業の売り上げも上がる、という地方都市の理想的な形が出来上がっていると言えます(カープコラボグッズで5億円の売り上げが15億円になってしまった……なんて会社もあるんです)。

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