しかし、この根拠はあてにはならないでしょう。数字的には確かにそうですが、しかし、この問題はすでに完全な「政治イシュー」で元々経済的には大した意味を持つものではない。いつも言っていますが、アメリカの貿易依存度はわずか15%程度で、対中国の貿易赤字額などアメリカGDP全体の数%もない。それを経済問題として取り上げること自体、いくらトランプでもありえない。これはある意味「完全な政治ショー」なのです。
事実、中国のZTE制裁においてかなりの譲歩をして見せたのはトランプ独特の「ディール」でしょう。今週は対欧州貿易交渉において、自動車問題をまずはきちんと棚上げして見せています。
ちゃんとマットに倒れてくれればギブアップする必要はない、といういつものプロレス流。それにのれない中国ではありませんね。
「中国の一人負け説」は間違っている
問題は、すでに政治問題と仮定すると、米中両国のトップ2人の支持基盤です。トランプは今がいちばん強力な基盤を有しており、共和党支持者に限れば90%を超える支持者をあの米ロ首脳会談の失態をもってしても維持しているのです(それどころか、全体の支持率まで上がってきた)。イランとの関係も気になるところですが、トランプ自身としてはある意味イケイケでしょう。(参考記事:WSJ)
一方の中国の習近平主席はすでに全権を掌握する経済大国の独裁者。何か都合の悪いことが起きればいくらでも法律を変えたり、揉み消したりできてしまう。中国内部にもさまざまな権力闘争により、いろいろ問題を抱え始めたという報道もありますが、あまり正確とは言えない記事が多いようです。「墨汁事件」にしても、焼身自殺事件にしても、中国が隠す気さえあればいくらでも隠せるレベルの事件です。それが出てくる……ということは何か裏があると考えるのが本筋です(つまり習近平には別な思惑がある)。
おそらく長期化する、という見通しは間違いないとすると、ある日突然支持率が下がってしまうリスクのあるトランプ大統領よりは、いくらでも情報規制や法律改正ができてしまう習近平主席のほうが明らかに有利に私には見えます。向こうはゲームのルールをいくらでも変えられますが、さすがにトランプ大統領といえども、議会や民意をそこまでは無視できない。ここが今後どう出てくるかはかなり未知数ですね。特に中間選挙が近いということを考えるなら、むしろトランプ大統領はあまり楽観視できない気もします(参考記事)。
はたして次のわたくしの順番まで、どんなことが起きているやら……ただ、大筋での見方として「中国の一人負け」のような考え方は間違っていると思いますよ、私は……。
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