日銀は「緩和の副作用」論をうまくいなした
7月30日、31日に行われた日本銀行の金融政策決定会合は、日銀が「金融緩和政策の副作用」と言われるものに配慮して、早期の金利の上昇を容認するようになるのではないかという一部の観測を否定する、マーケット参加者及びデフレ脱却を重要視する論者たちを安心させるものになった。
日銀が今回決めたのは、(1)政策金利の低位誘導を将来まで継続するとの発表(日銀は政策金利の「フォワード・ガイダンス」導入と呼んでいる)、(2)金利の誘導範囲を現在の目標値(短期金利がマイナス0.1%、長期金利が0%)の上下0.1%幅から2倍程度の拡大、(3)ETF(上場投資信託)による株式購入額は現状を維持するがTOPIX連動型の購入割合を増やす、といったことだった。
だが、一般には上記の(1)よりも(2)の方が注目された。「日銀は、金融政策決定会合で今の大規模な金融緩和策を一部修正し、長引く緩和の副作用をやわらげるため、政策の持続性を強化するとして、長期金利の一定の上昇を容認するなどの新たな措置を取ることを決めました」(筆者がたまたま出演したラジオ番組でニュースを紹介するアナウンサーが読んだ原稿より)と、「緩和の副作用」と「長期金利上昇の容認」に重点が置かれている。
金融政策決定会合の前に金融関係者の一部が期待したのは、「緩和の副作用を除去するために、長期金利の上昇を容認すること」だった。彼らは、長期金利が低く抑え込まれて、貸出金利、あるいは有価証券の運用利回りが低下して、金融機関の収益環境が悪化したことを「副作用」と捉えたのである。
簡単に言うと、金融機関は、「われわれが儲けにくいのは相当程度日銀の政策のせいである。しかし、金融システムの安定のためには金融機関の経営状態が大事でしょう」と訴えていたのだ。
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