日銀の「ステルス利上げ」は正常化への一歩だ

安倍政権下で広がる本音と建前のズレ

黒田東彦総裁のスタンスは明らかに変わったが、言葉の上では「緩和の継続」が続く。写真は今年3月のもの(撮影:大澤誠)

日本銀行の7月30〜31日の金融政策の見直しをどう見るか。FRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)に続いて出口を目指したものと考えてよいのか。

発表された展望レポートでは、2018年度の政策委員による物価見通し(生鮮食品を除く消費者物価指数、対前年度比)の中央値が1.3%から1.1%に下方修正された。2019年度、2020年度も下方にシフトしている。事実上2020年度までの2%の目標達成をあきらめたことになり、それを踏まえて、「長短金利操作付き量的質的金融緩和(YCC)」を調整したという。

具体的には、長期金利の誘導目標は0%に据え置きながらも、これまで上下0.1 %としていた変動範囲を「倍程度」、つまり上下0.2%まで容認するとした。年間約6兆円としていたETF、J-REITの買入額も柔軟化、ETFの買い入れ対象も東証株式指数(TOPIX)連動の割合を増やす。

講じられる措置は金利の上昇余地を認めるもので、緩和とは逆方向なのに、黒田東彦総裁は「緩和の持続性を強化する」と強調した。新たにフォワードガイダンスを導入し、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」と市場にアピールした。

副作用に配慮するも中途半端

今回の政策調整について野村証券の美和卓チーフエコノミストは「強化ではなく、副作用を考慮した柔軟化だ」と評価する。副作用はこれまでも指摘されてきたが、足元では具体的な問題も見え始めていた。

最も目立ったのは国債市場の機能低下だ。2018年に入り、新発10年物国債(351回債)の業者間取引は6度も不成立となっている。過去最多は2017年の2回だったが、すでに大きく上回る。現在、国債の4割超は日銀が保有しており、YCC導入後は値動きもなくなりつつある。

日銀自らも「金融システムレポート」等で指摘している金融機関の収益力低下も副作用としてあげられる。黒田東彦総裁はすでに昨年11月に「リバーサルレート」としてこの問題に言及している。日銀は「現時点では問題となっていない」としているが、地方金融機関を中心に低金利による経営悪化は明らかだ。スルガ銀行などに代表される「最近の地銀のスキャンダルも無関係ではない」(美和氏)と指摘されるところだ。

ETFの購入では、ファーストリテイリングに代表されるような、日経225に連動する一部の個別株における日銀保有比率の高まりが指摘されてきた。今回の修正は、これらの問題に対する応急処置となっている。

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