日銀会合後に円高に振れても一時的なものに

ソニーフィナンシャルHDの尾河眞樹氏に聞く

久しぶりに日本銀行に注目が集まっている。写真は今年3月の決定会合時のもの(撮影:大澤誠)
世界経済はいまのところ堅調に推移しているものの、アメリカのドナルド・トランプ大統領が中国への追加関税を拡大し、さらに為替のドル高是正に言及するなど、貿易摩擦をめぐる政治的な不安材料に市場は揺さぶられている。また2年にわたり金融政策の変更を行っていなかった日本銀行が30~31日の金融政策決定会合で金融政策の柔軟化を示唆するとの観測が浮上し、注目されている。今後のドル円相場の見通しをソニーフィナンシャルホールディングスのチーフアナリスト・尾河眞樹氏に聞いた。

決定会合で日銀は慎重な物言いに

――日本銀行が金融政策の柔軟化、とくにYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化に取り組むとの観測が出て、金融政策決定会合が注目されている。

こうした動きは想定していたよりも早かった。2017年のECB(欧州中央銀行)が参考になる。昨年、ユーロが15%も高くなった背景には、ECBが出口政策を目指したことがあった。これを受けて通年で見ると大きくユーロショート(売り)からロング(買い)にシフトする流れが起き、ユーロ高となった。金融緩和から出口への政策転換を市場が織り込む中でユーロが15%高くなったことを参考に、日銀が1㌦=100円割れは回避したいと考えるとすれば、出口政策について語るには1ドル=115円の水準感が必要と見ていた。

ただ、日銀は「柔軟化」はあくまで出口ではないと主張している。「緩和を続けるので、それによって金融機関に副作用が出る。緩和を安定的に続けるためには、イールドカーブを立たせて(長短金利差を拡大し)、金融機関がある程度収益を取れるようにしたい」との考えだ。「緩和を続けるために金利の上がる話を許容する」というのは、ロジックとしては無理があり、外国人投資家が納得するかは疑問がある。しかし、「金融緩和の出口戦略ではなく、正常化とは思わないように」というメッセージを市場に強く出していくだろう。

決定会合のポイントは、柔軟化をどう説明するか、その後に金利が上昇した場合に、どのような水準で指し値をしてくるかだ。31日は物価がなぜ上がらないかという検証と物価見通しの引き下げとともに、副作用があるのでYCCを柔軟にします、というところまでは出してくるのかもしれない。だが、政策変更という形にはならないだろう。金利の先高観を高めたくないからだ。

決定会合後に、長期金利が上昇して許容限度を超えてくれば、しっかり指し値オペを行ってくる。それによって、市場も落ち着いてくるだろう。長期金利はほとんど上がらないし、円高が大幅に進むこともないと見ている。

為替は今年1~3月に円高に向かい、1ドル=104円台までつけた。このときには、FRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げを進める一方で日銀は金融緩和を継続しており、市場はドル高円安を見込んでいた。IMM通貨先物市場では円ショート(売り)が13万枚ぐらいたまっていた。そのタイミングで日銀が資産購入のオペを減額したため、外国人投資家を中心に出口が意識され、円買い戻しの動きが出た。

だが6月には日銀がオペ減額を3回行っているにも関わらず、市場は無視し、円高は進まなかった。年初と異なりポジションの傾きがほとんどなく、市場もオペ減額は出口政策ではないと織り込むようになったからだ。

足元では円売りポジションが年初の13万枚に比べて4割ぐらいに減っているとはいえ、まったく円高に行かないかというと、1ドル=110円を割る程度は見ておく必要があるだろう。市場が出口戦略だと解釈すれば、112円の発射台から6~7円ぐらいの円高、105~106円はありうる。市場を説得できるかどうかは日銀の腕の見せ所だ。

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