トランプの対中貿易戦争は利敵行為にもなる 米国への「返り血」を避ける工夫はあるが

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強気を通すトランプ流だが、米中貿易摩擦がエスカレートすれば、米国経済にも悪い影響を及ぼす(ロイター/Kevin Lamarque)

春先から市場では米中貿易摩擦をめぐる話題が浮沈を繰り返しているが、足元でも混乱が収まっていない。5月下旬のスティーブン・ムニューシン米財務長官による停戦宣言はわずか2週間程度でうやむやにされ、米国政府は6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置との名目で500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す方針を発表している。まずは今週7月6日に340億ドル分(818品目)の追加関税を課し、残り(160億ドル分、284品目)は中国の出方次第で決めるという。

当然、中国政府は米国製品に同額の報復関税を課すことを表明しているが、ドナルド・トランプ米大統領はすぐさま「中国が(報復関税で)米国の企業や労働者、農家を脅している」と反意を示し、新たに2000億ドル規模の中国製品に10%の追加関税を課す方針を検討するよう米通商代表部(USTR)に指示している。

これらの動きを受け6月19日、中国の報道官談話として「(米国に対して)質と量を組み合わせた総合的な措置を取り、力強く反撃する」との立場が表明されており、米企業の対中投資に関する許認可制限や中国人旅行客らの米国への渡航制限など、貿易に限らない広範な分野への報復が示唆されている。文字どおり、報復合戦の様相を呈している。

勘違いから利敵行為に及びかねないトランプ流

2017年の実績を例に取れば、財貿易に関し、米国の中国からの輸入額が5063億ドルであるのに対し米国から中国への輸出額は1304億ドルであり、貿易赤字額は3759億ドルに達している。こうした輸出入の差額を踏まえ「米中貿易戦争を仕掛ければ敗者は中国になる」というのがトランプ政権の基本的な言い分と見受けられる。

これまでの言動からも明らかだが、トランプ大統領は貿易収支の黒字・赤字を企業収益の黒字・赤字のように錯誤しているフシがあり、「先方(中国)の輸出(売り上げ)を制限すれば、痛手に違いない」という発想に行き着きやすいきらいがある。かつてツイッター上で「貿易戦争はよいことで、簡単に勝てる」と発言したのも、関税をかければ相手国の輸出に歯止めをかけることは簡単だと思っているからだろう。

6月19日、対中強硬派として知られるピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長は記者会見で「(報復の連鎖で)中国のほうが失うものが多い」と発言しているが、これもまさにトランプ政権のスタンスを象徴した発言である。「輸出額が多いほうが困るだろう」と思っているのではないか。

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