トランプの対中貿易戦争は利敵行為にもなる

米国への「返り血」を避ける工夫はあるが

政権内ではムニューシン財務長官やラリー・クドロー米国家経済会議(NEC)委員長はこうした偏った政策スタンスにブレーキをかけたいと考えているもようだが、ナバロ委員長やロバート・ライトハイザーUSTR代表がこれと対立する構図が定着しており、大統領も後者寄りのため、現状に至っているのだと思われる。

中国が多くの米国製品に対して課している関税率は、米国が同等の中国製品に対して課している関税率よりも高いという事実もあり、大統領一派のタカ派スタンスは完全に的外れともいえない部分があるのも悩ましいところである。

トランプが理解しない貿易の複雑な構造

しかし、現実はもっと複雑だ。関税で輸出は減るかもしれないが、その場合、中国で生産して米国へ輸出している米国企業はどうなるだろうか。制裁関税はそうした在中の米国企業の経営を直撃するだろう。

また、中国の消費者を相手に財・サービスを提供している米国企業はどうなるだろうか。このまま貿易摩擦がこじれた場合、かつての日本車が米国でそうだったように、米国製品への不買運動が中国で起きる可能性はある。スターバックスもマクドナルドもナイキもその対象になろう。結局、トランプ政権の通商政策は巡り巡って中国企業への利敵行為にもなりかねない面があろう。

同様に「米国における中国人観光客」ほど「中国における米国人観光客」はいない。つまりサービス収支における旅行収支は圧倒的に米国が黒字であり、これも反米感情の高まりを受けて減少する可能性がある。過去10年で米国の対中旅行収支黒字は10倍以上に膨らんでいる。インバウンド(外国人旅行客)受け入れも外貨(黒字)を稼ぐという意味で立派な「輸出」なのだが、米国第一主義の下で外国人排斥志向が強いトランプ大統領には理解する余地のない論点かもしれない。

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