トランプの貿易戦争、ドイツに非はないのか

米独首脳会談を前に「異形の経済」を解説する

貿易問題、気候変動問題などさまざまなテーマで意見が対立し、相性の悪いメルケル独首相とトランプ米大統領(写真:REUTERS/Jonathan Ernst)

前回の筆者記事『日米貿易交渉入りで円高が進むのは必然だ』では、米国財務省による『為替政策報告書』公表(4月14日)を受けて、日本に厳しい視線を投げかける米国の通貨・通商政策を取り上げた。しかし、貿易収支や経常収支といった対外経済部門が抱える不均衡の規模で見た場合、日本よりもずっと気まずい国がある。それがドイツである。日本のメディアでは「米国対ドイツ」の問題についての解説はほとんど見掛けない。4月27日の米独首脳会談を前に、本記事ではここにスポットを当ててみたい。

米国財務省は2017年からのユーロ高でも満足せず

ユーロは過去1年間急騰し、文字どおり為替相場の主役であった。しかし、この点に関し米国の為替政策報告書は「歴史的に見ればさほど強いわけではない」と素っ気ない。これに続く「最近のユーロ上昇は危機や(緩和に傾斜していた)金融政策を受けて過去数年で下落していたことからの反発」との文言からは、「今までが安すぎただけ」という主張がうかがえる。

具体的には、2018年2月までの1年間でユーロが対ドルで15.7%、名目実効為替相場(NEER)で8.6%と大幅上昇した事実は認めつつも、「実質実効為替相場(REER)で見れば5.7%とより穏当であり、20年平均に比べると依然として3%割安」と、むしろさらなる上昇余地を指摘している。

こうしたユーロ相場への批判はおおむねドイツへの批判と読み替えられる。「最近の名目ベースにおけるユーロ相場上昇もドイツの強い競争力に即した(trackedした)ものではない」といった趣旨の指摘もあり、「(ドイツだけを考えれば)本来ユーロはもっと上昇すべき」との強い思いが表れている。

さらに報告書は「低い原油価格に加え、消費・投資を抑制し国内貯蓄を促すようなドイツの経済政策によって同国の経常黒字は急増しており、2017年は2990億ドルと名目金額ベースでは世界最大」と指摘している。この「消費・投資を抑制し国内貯蓄を促すような経済政策によって……」という指摘はドイツにとっては耳の痛い話である。

緊縮路線が国内の消費・投資意欲をそぎ、これが結果的に経常黒字の大幅拡大を招いていることは貯蓄投資(IS)バランスの現状を見れば一目瞭然だ。ドイツのISバランスは企業、家計、政府の国内経済主体がすべて貯蓄超過という異常な状況にある。企業部門は金融法人が若干の貯蓄不足だが、非金融法人と合わせれば貯蓄超過である。

報告書には「最新のデータでは内需の急速な悪化や、GDP(国内総生産)に占める個人消費の割合の低下が見られる」とあり、「対外収支の調整を合理的なペースで進めるために、成長志向型の税制やそのほかの改革で内需を支える必要がある」と提言されている。これは反論の難しい指摘だろう。
結論部分ではドイツの対米黒字を「過剰かつ重大な関心事(a matter of significant concern)」と断じ、金融政策がドイツの一存では決められないことや同国が完全雇用であることを差し引いても、世界第4位の経済大国としてグローバルインバランスの是正に寄与する責任があると述べている。

これに対してドイツが提示すべき処方箋は、拡張型財政(ユーロ圏共同債などの域内の所得移転策含む)への移行しかありえないわけだが、周知のとおり、これを実現するだけの政治的意思や突破力は今のメルケル政権にはどうやらない。

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