石破茂氏、「トランプと渡り合う私のやり方」 ポスト安倍の有力候補があるべき政策を語る

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「相手がいちばん不安な心理のときにディールをやるのがトランプ氏の手法なのだ」と石破茂氏(撮影:梅谷秀司)
森友学園・加計学園をめぐる疑惑や財務省スキャンダルなどで支持率が急落している安倍晋三政権。今秋の自民党総裁選での安倍首相3選は危ういとの声も聞かれ始めた。急変する政局の中、"ポスト安倍"としてつねに名前の挙がる石破茂議員に話を聞いた。
得意の安全保障政策では、明快な論理を展開、憲法改正は急がず、その前にやるべき議論がたくさんあると語った。経済政策では、日本銀行の出口戦略を急がないとのメッセージを強調、金融マーケットの反応に配慮する姿勢を見せた。

――トランプ大統領の言動が世界を揺るがしています。外交上の対応は石破さんならどうしますか。

ある財界人の知己は、日本がバブル期でニューヨークのビルを買い漁っていたころ、トランプ氏と取引したことがある。彼が言うには、「トランプはサスペンスとディールの男だ」と。取引したとき、よいところに泊めてくれ、おいしいものを食べさせてくれ、こんないい奴はいないと思ったら、つかまされた不動産はろくなものではなかったと。

また、若かりしトランプはハワイ・ワイキキにあるトランプビルを日本に売りにきたことがある。都内の某ホテルのスカイラウンジを借り切って、窓いっぱいのスクリーンにワイキキのビーチを映して、「この物件を買うとこんなすてきなビーチを見られる」とやった。ところがトランプビルの近くにマンションの部屋を持っている日本人がいて、あのビルからこんな景色が見えるわけがない、こいつは詐欺師ではないかと怒ったという。

いずれにせよ、サスペンスドラマはハラハラドキドキ、朝言ったことと夜言ったことは違う。あるいは大統領と長官の言うことが違う。記者会見でなくツイッターで言いたいことを投稿する。「これは何なんだ」と、みんな不安な心理になる。そして、相手がいちばん不安な心理のときにディールをやるのがトランプ氏の手法なのだ。彼の念頭にあるのは、今秋の米国中間選挙に勝つことだから、米国の利益、支持者の利益を極大化するためには世界のことは知ったことではないと考えるだろう。良い悪いではなく、そういう人なのだ。「仲よくしておいたら、いいことしてくれるよ」というのはビジネスにおいてはあり得ない。それと政策判断は別だと思う。

「米国の言うとおり」ではダメ、自らカードを持つ

――日本の外交姿勢は変えるべきですか。

中国にしてもロシアにしても北朝鮮にしても、「日本という国は、根本は米国の言うとおりなのさ」となれば、彼らは日本相手に交渉しても意味がないと思うだろう。事実、北朝鮮問題とは米中関係の従属変数だ。日本が日本の役割を果たすには、安全保障上、立場を共有することが多い韓国との間でいかにして信頼関係を築くか。中国、韓国を悪しざまに言っているのは気持ちいいかもしれないが、それが国益になるか。米国と対峙するときに、有利になるのか。日本は韓国や中国と貿易以外でもこんな信頼関係を持っている、となれば、米国と渡り合うときに強みになる。

――石破さんの日米安全保障の評価にもつながる話ですね。

米国にとって日本は安保上の利用価値が高い。日米安保を貫く米国にとっての利益とは何か。安保条約で日本国内のどこにでも、いつまでも、どれだけでも米国の兵力を展開できる、その権利を手にすることが日米安保の目的だとジョン・フォスター・ダレス氏(アイゼンハワー大統領時の国務長官、日米安保条約締結を主導)は言い放っている。私は米軍の日本駐留は日本にとって必要だと思っているが、それを日本の条約上の義務として提供するか、日本国民の選択の結果として提供するのかではまったく違う。米国にすべてを依存するのではなく、自らの選択としての米軍駐留だと、日本人はどれだけ言えるのか。そのように言えるためには、サスペンスとディールのトランプに対して、こちらがどのようなカードを持つかが重要だろう。

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