石破茂氏、「トランプと渡り合う私のやり方」 ポスト安倍の有力候補があるべき政策を語る

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――安倍晋三首相の消費増税の2度の延期、使途変更をどう評価しますか。

政治的に言えば、それは自民党内であった議論ではない。政治の手法としてはいかがなものかと思う。消費税を上げれば経済が悪化するかといえば、必ずしもそうではない。企業の売り上げ、個人所得が増えていれば、消費税を上げた分は吸収できると思う。消費税が上がってもそれを飲み込めるだけの経済を作っていくことが大事だ。

雇用については、団塊世代がリタイアしているので有効求人倍率が上がるのは当然だ。実際、民主党政権時代から上がりつつあった。しかし、賃金がそれに応じて上がらないのは、生産年齢人口から高齢者へ、男性から女性の非正規へ、製造業からサービス業へ、雇用がシフトしていることも原因だ。高齢者、女性の非正規、非製造業の賃金をいかに上げるかを考えるならば、生産性の向上が必須だ。

――社会保障費の膨張を抑え込むのはたいへんです。

社会保障改革は重要になる。税と社会保障の一体改革は必要だが、結局それは税を上げて、社会保障を効率化するという、あまり楽しくないもの。社会保障をいかに経済成長のエンジンにするかという発想が大切だと思う。「社会保障の産業化」というと誤解を招きやすいが、社会保障の水準を下げることなく、社会保障関連産業の収益を上げていく方策はあると思う。高齢者が増える、罹患率が上がる、だから消費税を上げるでは、小学生の話。それでは知恵がない。消費税を上げる場合、いかにして税率アップを最小限にとどめていくかも併せて考えないといけない。その際、保険としての機能を見直すことも重要だと思う。

――将来的には消費税は、何%までの引き上げが必要になりますか。

それは感覚で言ってはいけない。精密に計算しなければならない。私が農林水産相のとき、コメの生産調整見直しでいろんなケースを基に米価がどこまで下がるかを徹底的にシミュレーションしたことがある。消費税についても、「15%で止めたいな」とか、「20%で止めたいな」などという、感覚の話では意味がない。いろんなケースを想定して試算を徹底して行ったうえで言うべきことだ。

――2019年10月の消費税率引き上げですが、現在のような景気なら石破さんは上げますか。

私は予定どおり上げられるようにするための環境を作るのが大事で、もっと景気がよいと実感する人が増えるように努力すべきだと思う。

「どんな国家を次の世代に残すか」が問われる

――今後の政局をどう読みますか。

いつ何が起こるかわからない。1カ月後に何が起きているかもわからない。だけど未来永劫続く政権はない。安倍総理の第1次政権の終わりだって「えーっ」とみんな思ったし、その日の午前中まで誰も予想していなかった。本当に何が起こるかはわからない、また安倍内閣の支持率が急上昇するかもしれない。

――今年9月の自民党総裁選への出馬はあると考えてよいですね。

オリンピックではないので参加すればよいのではない。そのときには経済、社会保障、地方創生、安全保障、総合的にきちんと説明できる体制を作らなければ意味がない。自分だけで全部できるわけではない。うちの水月会(通称・石破派)は人数は20人だが、この政策ならあいつに任せられるという人がそろっている。金融担当大臣経験者が山本有二氏、伊藤達也氏と2人いる。社会保障だったら、鴨下一郎氏、田村憲久氏。新しい産業でいえば、後藤田正純氏、平将明氏がエキスパートだ。全員を挙げたらきりがないが、みんな自分の言葉で政策を語ることができる。そういう人たちに任せるべきところは任せる。

――人口急減時代への対応では、小泉進次郎議員との連携も視野にありますか。

違和感はない。"人生65年時代"に設計したシステムを、"人生100年時代"にどうするかということ。そういう時代の国家のあり方は若い人たちが考えるのがいいだろう。われわれは、どんな日本を次の世代に残すかだ。逃げ切り世代だなんて考えてはいけない。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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