日銀会合後に円高に振れても一時的なものに ソニーフィナンシャルHDの尾河眞樹氏に聞く

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尾河 眞樹(おがわ まき)/ソニーフィナンシャルホールディングス執行役員兼金融市場調査部長、チーフアナリスト。米銀の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替の運用と金融市場の調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職に就任し、レポートやテレビ、雑誌などのメディア等を通じて幅広く個人投資家に向けた金融市場の情報発信を行っている。

――なぜ今、柔軟化の話が出てきたのでしょうか。

日銀がこのタイミングで柔軟化に触れた背景には、トランプ大統領が為替水準に言及したことへの警戒感もあるだろう。トランプ氏が今後ドル高をさらに牽制する発言を行って、1ドル=110円を割ってしまってからでは、柔軟化の話をするとリスクが高い。いったんゼロになった円売りポジションが増えてきたこともある。今はマーケット全体がまだリスクオンなので、こうしたことを複合的に見て、柔軟化に触れるなら今のうちだと思ったのかもしれない。

しかも、今後は9月の自民党総裁選、2019年4月の天皇生前譲位と統一地方選、夏の参院選、10月の消費税増税と政治イベントが続く。来年は金利の上がる方向の話はしづらい。

よって動きがあるとしたら、2018年10月から2019年3月までのタイミングだ。指し値オペの水準を変えるとすれば10月の「展望レポート」を経て12月ぐらいか。ただ、現在は長期金利の上昇を放置している部分もある。12月を待たずに柔軟化を明確に表明して、指し値オペをする可能性も残されている。

トランプ大統領が不満げでもFRBは淡々と利上げ

――7月にはトランプ大統領による中国への追加関税やドル高是正発言でもやや円高が進みました。今後のドル円相場の見通しは。

年初は今年の年末は1ドル=115円程度と見ていた。日銀の金融政策決定会合の結果、1ドル=105~106円まで円高が進む事態になれば、年末は1ドル=110円ぐらいに見通しを下げる可能性がある。

米国サイドに関して言えば、2018年の特徴は経済の安定感と政治の不安定感の綱引きだ。経済面での好調は変わらず、FRBが年内は9月と12月に淡々と利上げする方向性は変わらないと見ている。年内の2度の利上げでも経済を引き締めるほど長期金利が上がってくるとは考えていない。

関税の拡大は米国内のインフレ率を高める方向の話でもあり、FRBは利上げを継続し、基本的な政策がドル高を進めるものになっている。トランプ大統領がFRBの利上げに不満を述べたからといって、FRBが利上げをやめることはない。市場が貿易摩擦問題に反応して一時的に円高に向かうことはあるかもしれないが、決定的に為替のトレンドを変える要因にはならない。日銀の柔軟化があっても、金利差が縮むわけではないので、緩やかなドル高円安の基調は変わらないだろう。

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