「大家さんと僕」が日本人にじんわり響く理由 大家さんには現代人にない上機嫌さがある

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「大家さんと僕」がウケた理由は、大家さんの「上機嫌力」にあった?(写真:新潮社写真部)
自身が住むアパートの大家さんとの何げないやり取りを描いたマンガ『大家さんと僕』。その独特のゆったりとした間合いや、安心感が人気となり55万部と超すヒットとなっているほか、作者で、お笑い芸人のカラテカ・矢部太郎さんは同作で手塚治虫文化賞短編賞を受賞しました。今回は、発売当初から同作を高く評価していた、明治大学文学部の齋藤孝教授と矢部さんの対談が実現。『不機嫌は罪である』が話題となっている齋藤教授は、大家さんの「上機嫌力」こそが日本人の心に響いたと語ります。

『大家さんと僕』=『ピーナッツ』説

齋藤:いきなりですけど矢部さん、『ピーナッツ』って知ってますか。

矢部:あのスヌーピーのマンガですか? もちろん知ってます!

齋藤:僕は矢部さんの『大家さんと僕』を読んで、『ピーナッツ』シリーズを思い出したんですよ。

矢部:え、何言ってるんですか……恐れ多すぎますよ!

齋藤:描き込みすぎないシンプルな線、多くは語らないけど哲学的な言葉……『大家さん』はそんなスヌーピー的な省略の美学によって描かれた、まさに和製ピーナッツだと思うんです。

矢部:和製ピーナッツ……。僕、『大家さん』の次にどんなマンガを描いていこうか悩んでたんですけど、今ハッキリ方向が見えました(笑)。

齋藤:それに『大家さん』はビジネスにも役立つ“上機嫌マンガ”でもあるんです。今年1月に出演した「世界一受けたい授業」(日本テレビ)では「名作マンガから学ぶ日本語」というテーマでお話しさせてもらったのですが、そのなかで『大家さんと僕』を紹介したんですよね。

矢部:その節はありがとうございました! 僕はそのとき生徒役で。実は、あのあと先生役としても出演してもうすぐ放送されます(7月28日予定)。でも、もう全っ然ダメで……緊張ですごくナーバスになってしまいました。司会のくりぃむしちゅー・上田さんからも「矢部くん、無理せずに。本当にダメになったら言ってね」と言われて(笑)。

齋藤:でもその雰囲気って、矢部さんの持ち味ともいえますよね。

矢部:いや、でも……。僕があまりに緊張しすぎて、その場が堅い空気になっちゃって……。

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