「大家さんと僕」が日本人にじんわり響く理由

大家さんには現代人にない上機嫌さがある

矢部:確かに大家さんって不機嫌なことがありません。それに、なんで大家さんが上機嫌に見えるのかと考えると、言葉遣いの丁寧さが大きいのかなと思って。あいさつはいつだって「ごきげんよう」なんです。ご両親が教育者だったので、徹底して言葉遣いを指導されたらしく、だから品が良いし、機嫌よくも見える。相手を思うからこそ、丁寧にお話しされているともいえますよね。

「超」「ヤバイ」という言葉を使うと損をする

(c矢部太郎/新潮社)

齋藤:このセリフだって、ものすごく丁寧な言葉遣いです。「今しかないのですものね」なんて、普通使わないですよね。

矢部:大家さんの口調そのままです。

齋藤:言葉を「もの」としてとらえたとき、その手渡し方って大事だと思います。たとえばハサミをぞんざいに放り投げられたらイヤですよね。優しく渡してほしい。大家さんは、ものすごく丁寧に言葉を手渡してくれるんです。つぶやくような、それでいて相手の手にそっと置いてくれる。

矢部:「87の夏は今しかないのですものね」なんて言葉をスッと手渡されたら、こちらも丁寧に答えなきゃと思います。言葉のキャッチボールとして。

齋藤:お互い丁寧に、手渡しし合うキャッチボールですね(笑)。そういえば、江戸時代の終わりごろ日本に来た外国人は、日本人同士がいつまで経ってもあいさつの頭を上げないので不思議に思ったそうです。昔はそんな丁寧なやりとりが普通にされていたんですよね。

矢部氏が「ヤバい」「超」という言葉を使うと、大家さんから注意されるという(写真:新潮社写真部)

矢部:僕が「超」「ヤバい」みたいな言葉遣いをすると大家さんから注意されるのですが、「そんな言葉を使われると矢部さんが損をされる。似合わないのでやめたほうがいいですよ」っておっしゃるんです。確かに品のいい言葉遣いをしていると、それだけで気分も上向いてくる気がします。

齋藤:でも矢部さんは芸人ですから、「超」「ヤバい」を使いたいときもありますよね?

矢部:ありますね。「なんでだよ!」の代わりに「なぜでしょうか?」なんてツッコめない。

齋藤:それは逆に新鮮かも(笑)。

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