医師不足への処方せん
医師数の適正な配置だけを目的にするなら、医師を皆、公務員化してしまえば、警察官や自衛隊員のように医師の配置もコントロールでき、少なくとも偏在は解消に向かうでしょう。
しかしそのようなことはおそらく起こらない(イギリスやドイツのように診療科や地域により医師の絶対数を制限するようなことは将来的にあるかもしれませんが……)。
医学部に定員を設け、医師になる人数を調整しているのは、医師数が適正な水準を維持することで国費の無駄な投入を避け、医師同士や病院同士の過剰な競争をさせないことが目的です。そうであれば診療科目や地域、医療機関ごとの医師のニーズと医師一人ひとりのキャリアを統合させていくことが必要なのです。
そのために私自身が考えるミスマッチ防止策を以下に挙げます。
1.後付けでも結構、なぜ自分は医師になったかを徹底的に考えさせること
医師になる明確な目的があり、将来に迷いがない方は別として、(成績がよいから)医師になってしまった、医学部に来てしまったなど、医師になってからのキャリア意識が非常に低い方がいます。そういった方にはキャリアというより医師としての人生の教育をすべきだと思います。同時に多様な医師のキャリアを指し示し、その中で有効な選択ができるようにアドバイスする。医学部と国試に受かるということは医師になる素養があるということ。それを周りがサポートし、医師であることの自覚を深めるとともに、適切なキャリアが選択できるような環境を作ることが重要だと思います。
2.医師の需給バランスや労働市場の理解をさせること
医学生や研修医には、地域別や科目別の医師の過不足や、興味ある診療科の実際の働き方、忙しさなどを詳しく知らない方がいらっしゃいます。なんとなく選んだ科目が実は医師過剰だった、教授の勧めで入局したがあまりの医師不足で体が保たない――などの話はよく聞きます。それを避けるためにも、自分の希望や周りの一方的な情報に頼りすぎないことが大切です。マッチングは需要と供給のバランスで動いており、安易な進路選択はその後の人生において、さまざまな迷いを生んでしまいます。医師が自分らしいキャリアを選択できるようになるためにも、医師の労働市場の状況を知ることは大切で、そこから見えてくる自分の役割がわかるはずです。
3.自分の能力を過信せず、自分の体力や適性にあった病院、診療科を選択させること
研修医で調子を崩す方は、大抵、自分の能力や体力を過信しすぎ、優秀といわれる研修病院を選択しがちです。医学部の勉強と実際の研修はまったく違い、体力のない研修医はそこで挫折する傾向があります。キャリアは継続的に発達すべきもので、それが初期研修中に挫折すると、そこからキャリアを修正するのは大変です。それゆえ医学部を卒業してからのマッチングはとても重要で、第三者からの助言や自分の適性を理解したうえで、マッチングの希望を出すべきだと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら