①の女性医師の支援については、制度や女性医師活用の方針は作ったものの、現場の医師とのニーズに乖離があると感じました。たとえば女性医師を対象にした復職プログラムを作った大学がありましたが、私の知り合いの医師は勤務先が遠くて通えない、給与が安すぎる、そもそも勤務条件が合わないので「話にならない」ということでしたし、保育所が整備されても病院の事情はさまざまで、医師の利用者は非常に少ないことをよく耳にします。
②の医師とコメディカルの業務分担といっても、どこまでコメディカルが医師の診療領域に立ち入ることができるかということは、センシティブな話題になります。現在、医師の事務作業補助として、診療以外のところでクラーク的な役割をしていますが、医療従事者が医師の業務を分担する事には慎重論が根強いのです。
③のドクターバンクにしても地方自治体の職員が、通常業務に加えて医師の招聘を担当し、問い合わせがあった医師に就職先を紹介するということですが、正直なところ、民間の人材紹介会社と比べて、やる範囲もそのきめ細かさもレベルは全然違います。一部では成果は上げているかもしれませんが、医師や求人の方からはそれを頼ったという話は、あまり聞いたことがありません。
医師数を増加させるためのグランドデザインや、国、自治体を上げての医師招聘策については、政治家の方や医師会、識者の方々が考えられるのでしょうが、最後は個々人と医療機関とのマッチングになる。その細部までイメージした政策設計はあまり行われていないように感じます。
キャリアコンサルタントが考える、医師不足および偏在
われわれのような人材紹介会社は
・求職者である医師の希望を、ある程度、満たす求人を見つけ、勧める
・求人である医療機関の希望に合う医師を探し、紹介する
その後、マッチング(採用)まで持っていくのを仕事としています。
現在、医師を取り巻く労働市場でこのマッチングを需要と供給の関係を考えると、「需要(医療機関)>>>供給(医師)」ということになりますが、これを適正化して「需要≒供給」に持っていけば医師不足は解消することになります。
医師になる人の数は増えておりますが、まだまだ偏在は大きいというのが正直な感想です。東京の都市部においては医師が増え求人の数は減少傾向ですが、相変わらず地方を中心として病院の求人ニーズは大きく、日々、医師が欲しいという電話がかかってきます。医師不足が問題となって久しいですが、依然としてそれが深刻であるとすると、医療機関と医師のマッチングがうまく行われていないことが、最大の要因ではないかと思います。
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