「松坂世代」の古木克明が引退後に追う夢 復活を遂げた松坂大輔投手に対して思うこと

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それでもなぜ、第2の人生で野球に携わることを選んだのだろうか。古木はその理由について、こう話す。

プロ野球選手引退後を回想する古木克明氏(筆者撮影)

「格闘家に転身してしばらく経った時に、“またバットを振りたい”って思ったんですよね。野球が好きな気持ちに改めて気付いた瞬間でした。引退後、自分が得た経験や生き方の中で社会に役立てることは、やはり“野球”しかないな、と。

そう考えた時に改めて日本の野球に目を向けると、年々競技人口は減り、身近にプレーできる場所が減っていることに気付いたんです。その時、野球の普及と楽しさを伝える活動をしようと、決断しました」

そうしてBaseball Surferを2017年に立ち上げ、野球教室とTシャツやパーカーを販売するアパレル事業、そして草野球や野球指導に出向く「助っ人古木」という3つの活動をメインに行っている。

野球教室は、茅ヶ崎のハヤシスポーツクラブで月曜と金曜、鵠沼海岸のパルバルクラシックで火曜と水曜にそれぞれ実施。小学1年生から中学3年生までが対象だ。

自分で考える力を身につける重要性

練習のほとんどの時間に費やしているトスバッティングでは、子どもたちに野球とは関係ないことを考えさせているという。

トスバッティングでは言葉遊びをしながら、考える力をつけようとしている(筆者撮影)

「どんなスポーツでも、発想力を鍛えることは大事。それが大人になって野球に繋がるのか、ビジネスに活きるのか、わからないけれど、自分で考える力は身につけてもらいたい」

この日の野球教室でも、その教育プラン通りに練習を進めていた。

スイングをするたびに、山手線の駅名を答えていく、いわゆる「山手線ゲーム」を行っていたり、しりとりのような形で言葉遊びを加えながら、一球一球バッティングをしていたのだ。

この練習を取り入れた背景には、自身のプロ野球選手としての苦い経験がある。

今は神奈川県内で子どもたちの指導に精一杯取り組んでいる(筆者撮影)

「僕はいい素材を持っていたのかもしれないけど、活躍できずに短命で終わってしまった。そこには、考える力が足りなかったことが原因としてあったんです。

プロに入ってから自分のことしか考えなかったので、結果が出ない時は“何で調子悪いんだろう”と思いながら、ただバットを振ることしかできなかったんです。

本来なら、相手がどう自分を抑えてくるのか、それに対する戦略を立てないといけなかった。そこに気付いた時には、もう手遅れだった……。だからこそ、打てない時には“打てませんでした”じゃなくて、どうして打てないのかを自分で考えて、答えを導き出せるようになってほしい。その積み重ねが、広い視野で客観的に物事を考えられる能力の発展に繋がるんです」

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