シンガポールが米朝会談にかけた警備の中身 東京五輪に生かす最新テロ対策事情
イギリスが“雇い兵”としたのがグルカ兵の始まりで、イギリス軍では200年以上の歴史を持つと言われており、植民地だったシンガポールなどにも広まった。詳細は明らかにされていないが、シンガポール警察は独立前からグルカ兵を要人の警護などに登用しているとされている。さらに、シンガポールの警察官は、この期間中の休暇取得を凍結されたと報じられており、米朝首脳会談にまさに最高レベルの警戒態勢を敷いていたことは間違いない。
「世界一安全な国」と評されることになった経緯
東南アジアの金融のハブとして発展してきたシンガポールは、アメリカやヨーロッパの大都市がテロのターゲットにされるなかで、近年大きなテロ事件が発生していない。そのため、今回の首脳会談開催が決まった際にも「世界一安全な国」などと評されたわけだが、それは決してテロリストに狙われず、テロ計画が一度もなかったことを意味するわけではない。むしろ、周囲をイスラム国家に囲まれ、インドネシアやフィリピン・ミンダナオ島の過激派組織などの脅威にさらされながら、テロ対策に真剣に対峙してきた経緯がある。
今回の米朝首脳会談の会期中、金正恩氏御一行が夜間に突然シンガポールの観光名所である「ガーデンズバイザベイ」から「マリーナベイサンズ」などを上機嫌に散策、その大胆な行動ぶりはシンガポール市民のみならず世界を驚かせたが、まさにそのマリーナベイサンズ自体が過去に、イスラム過激派により対岸からロケット砲で狙われるテロ未遂事件があったことはあまり知られていない。
あれほどの要人一行を、観光客や地元民でにぎわうシンボリックなスポットに短期間の準備で歩かせることができた背景には、シンガポールの常日頃からの警戒態勢の蓄積があるのは明らかだ。事実、今回の会期以前にも、正恩氏が散歩をしたエリアで銃を持った警官が警備に当たっているのを筆者は幾度となく目撃している。
近隣諸国からの脅威だけではない。IS(イスラム国)に感化されて過激化したシンガポール国民も摘発されており、オンラインで過激思想に容易に触れることができる中でIS撤退後もテロの脅威はますます高まっていると指摘されているのが現実なのだ。
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