シンガポールが米朝会談にかけた警備の中身 東京五輪に生かす最新テロ対策事情
さらに、米朝首脳会談によるマーケティング効果を巧みに利用しようという思惑が垣間見える、ウィットの効いた品の数々も見掛けた。たとえば、クッキーやブラウニーなどの箱詰めが無料で配られるコーナー。ボックスをよく見るとこう書かれている。
これは、去年トランプ大統領が米フロリダ州にある別荘「マール・ア・ラーゴ」で中国の習近平国家主席を招いた夕食会の最中、デザートのチョコレートケーキが供された際にシリアへの攻撃について説明をし、物議を醸したエピソードを意識したものだろう。ちなみに芸はさらに細かく、原材料などが書かれている隅のほうを見やると、
つまり、「Fake(偽)の材料はいっさい使用しておりません」――との注意書きがあった。
そのほかにも、地元紙ストレーツ・タイムズの提供で、主役2人がでかでかと描かれた丸いうちわや、メモ帳、ペットボトルが配られるなど、この歴史的な会談の舞台となったまたとない機会を巧みに利用し、政府と企業が一体となって自国のプレゼンテーションをしようとする狙いはそこかしこでうかがえた。シンガポール国民からは「莫大な金額を投じすぎ」などの批判も一部聞かれたが、ロイター通信は「首脳会談の会場提供による広報効果は出費の10倍を超える価値を持つ可能性がある」との専門家の声を紹介している。
実は大半が警備費用 ホテル周辺だけでなく海上も
だが、相当な大盤振る舞いをしたかに見えるこうした演出も、実際に拠出した金額全体からすると、そう大した額ではない。実は、その大半を費やしたのが、ほかでもない“警備”に関する費用であったとされている。金正恩氏とトランプ氏一行が宿泊した高級ホテル周辺は、付近数百メートル手前から厳重なバリケードを設置して車両が規制されたほか、市内中心部を歩けば、至るところに配置された警察官や軍の兵士が目を光らせていた。海上での警備も抜かりなく、本島から海を隔てた会談場所であるセントーサ島周囲の海域には、警備に当たる船が巡回していた。
さらに、シンガポール警察の最高精鋭部隊「グルカ兵」が主要箇所の警備に投入された。グルカ兵とは、ネパールの山岳民族出身の戦闘集団を示す呼称で、比較的小柄な体格だが、身体能力が高く勇猛で敏捷なため、世界的にも雇い兵として重宝されている。
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