シンガポールが米朝会談にかけた警備の中身 東京五輪に生かす最新テロ対策事情

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シンガポール政府が推めるテロ対策「SGセキュア計画」(画像:“SG SECURE” HPより)

これは、シンガポール政府が2年前に満を持して導入したテロ対策専用アプリで、国民にダウンロードが強く奨励されており、彼は自分の部下全員にアプリをダウンロードさせたほか、妻と小学生の子どもたちも使っていると胸を張った。

2年前にシンガポール政府は、国民全員がテロ対策に参画することを目指す「SGセキュア計画」の開始を発表し、すべての選挙区で緊急時に備えた訓練を実施することを決めた。各家庭でも不審な人物、動きを見つけ出すための訓練を受けるよう奨励されており、もはやテロは政府だけが取り組んで解決する課題ではなく、国民が一体となって危機感を共有しなければならない喫緊の「脅威」であると、警鐘を鳴らし始めているのだ。

散歩やジョギングの市民が多く集う海沿いの公園にも、不審者警戒を呼び掛けるポスターが(筆者撮影)

シンガポールの駅構内には、「SGセキュア」の普及ポスターが貼られ、街中を走るタクシーの車体にも大きなイラスト付きで宣伝されているのを目にした。また、SGセキュアをより身近に感じてもらおうという試みからか、主婦同士が夢中で井戸端会議をしている際に子どもが近くに置かれた不審なバッグにふと気づき、SGセキュアの警告ポスターを見て母親たちに知らせ、あわや一発危機を免れる――(結局バッグは清掃員の所有物だったというオチだが)という動画などが、インターネット上で広まっている。

これらの動画は、「Join the SG Secure Movement=SGセキュア運動に参加を!」というタイトルでシンガポール政府が主導して制作・普及に努めているものだ。老若男女が登場するバラエティに富んだテロ対策動画は、コメディタッチで興味関心を引く工夫がなされており、あらゆる年齢層に向けてテロに対する危機意識を共有してもらおうという意図がうかがえる。

ちなみに、内務省によるとSGセキュアのアプリは昨年末時点で130万台以上のデバイスにインストールされており、人口約560万人のシンガポールにおいては相当な普及率であると言えるだろう。

政府が米朝首脳会談警備に投じた膨大な費用

6月24日、シンガポール政府は米朝首脳会談に1630万シンガポールドル(約13億1000万円)を投じたと公式に発表した。確かに、シンガポール政府の首脳会談に対する気合いが強く感じられる場面はいくつもあった。

F1シンガポール・グランプリが開催される拠点に設置された各国の報道関係者が集う国際メディアセンターでは、シンガポール名物のチキンライスや、ココナッツベースのスープが人気のラクサという麺料理など地元の名物のほか、西欧料理やインド料理など、国際色豊かなメニューが熱々のままビュッフェ形式で用意された。これらはすべて無料で提供され、各国のメディア関係者の胃袋をがっちりとつかんだ。

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