発達障害の人は企業で「貴重な戦力」になるか 東京海上の特例子会社事例で考える

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東京海上ビジネスサポートのオフィス・サービス部で働く新堀隼さん(撮影:筆者)

同社では308人の従業員のうち、155名が障害者だ(2月1日現在)。精神保健福祉手帳保有者が81名で、そのほとんどが発達障害者である(その他、知的障害が70名、身体障害が4名)。

新堀さんは2007年に人材派遣業務を行っている「東京海上日動キャリアサービス」に入社した。2010年になって「東京海上ビジネスサポート」が設立されたときに異動した。名刺印刷などの事務業務を経て、現在はドライブレコードを解析するという業務についている。

「彼には学習障害があり、漢字、文字があまり得意ではありません。しかし、Excelとか数字にものすごく強いのです。高校卒業後は自動車整備工場に就職しました。そこで発達障害を指摘されて別の特例子会社に就職し、その後2007年に前の会社に入社し、現在に至っています。今の仕事は、彼の特性を活かした仕事になっています」

そう語るのは、同社の3代目の取締役社長、堀内武文さん(62歳)。障害を持つ社員のキャリアについて、深い知見を持っていた。

東京海上グループは、従業員3万人を超える日本を代表する大企業だ。2011年に東京海上グループの社内物流と印刷などの業務を行っていた「東京海上日動オペレーションズ」と、ノベルティー事務用品の販売などのオフィス・サービスを行っていた「東京海上日動コーポレーション」が合併し、現在の特例子会社の体制となった。

「2008年当時の東京海上グループでは、グループの中で10社が法定雇用率に達していませんでした。そこでグループの方針として、障害者雇用に積極的に取り組む方針を決めました。法定雇用率にとどまらず障害者を広く受け入れ、多様な人材が生き生きと働いている企業を目指すビジョンを2008年に掲げました。それを踏まえて当時、就労機会に恵まれなかった、特に発達障害の方と、知的障害の方を中心に雇用創出をしていきたいという考えから、この会社を2010年に設立したのです」(堀内社長)

これからの特例子会社の課題

今まで東京地区では多くの社員を特別支援学校の職業教育を受けている生徒から採用しているが、今後は、法定雇用率の上昇も鑑みて、大卒の新入社員も考えていきたいという。実際、今年1名採用しているが、現実はなかなか厳しいようだ。

取締役・業務支援部長兼オフィスサービス部長の山田一也さん(撮影:梅谷秀司)

「大学側とパイプを作っていくことが大事ですね。大学によっても障害者の就職に関してはだいぶ違いがあり、誰が障害者かということさえもわかっていないところもあると思います。

就職活動する中で、壁にぶつかってしまうという学生もおり、初めてそこで発達障害とわかったという方もいらっしゃるようです。適性のある人はこういった仕事をやっているんだということを理解していただき、学生を紹介してもらえればありがたいです。

就労支援施設は実習を行いますが、大学生は卒業するタイミングになっても、われわれの仕事に合うかどうかという見極めがなかなか難しいところもあるのが課題だと思います」(取締役 業務支援部長兼オフィスサービス部長 山田一也さん)

同社にも大学を卒業した後、一般企業に就職したのだが、人間関係でつまずいてしまって入社してきた軽度の知的障害と発達障害の人が数名いるとのことだ。大卒の新卒入社の障害者をどのように考えていくのかについて、まだ答えが出ない状態だという。

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