奇跡のスーパー「サンヨネ」を知っていますか? 魚離れを逆手にとる!鮮魚部の挑戦

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「愛知県」というとトヨタ自動車のイメージが強すぎて、個性よりも協調性や組織力を求められる風土と思われがちだ。いや、実際にトヨタ関連の就労者が圧倒的に多い土地柄なのだ。うどん県ならぬトヨタ県といっても過言ではないだろう(愛知県地図を見ると、北部に巨大な豊田市がある。山間部の市町村を吸収しながら拡大中!)。

しかし、個人事業や小さな会社で創意工夫をしながら働いている人たちも、探せばたくさんいる。誰もが知っている商品ブランドや億単位のビジネスを扱っているわけではないけれど、自らの決定や行動が事業の今後を大きく左右する立場で、仕事と生活を渾然一体にして働いている。その姿に触れ、励まされることが多かった。

本連載の最終回を迎える今回は、東三河地域で5店舗だけ展開している食品スーパー「サンヨネ」の従業員に登場してもらう。海産物卸を祖業とするサンヨネは、品質重視の豊富な品ぞろえで、遠く名古屋圏からも客を集めているスーパーだ。チラシなどの広告宣伝費は一切かけない、粗利の50%は従業員に還元、清潔で広い休憩室とバックヤード、夜7時には閉店、原料や調味料の安全性にこだわったプライベートブランドの開発など、短期的な利益よりも従業員と顧客の健康を優先する施策で黒字・無借金経営を続けている。

経営層は同族の三浦家で占められているものの(総領はサンヨネの語源である三浦米三郎を襲名する)、各店舗の現場主任への権限付与は大きく、それぞれが自分の判断と責任で仕入れ・値付け・陳列を行う。そのせいか従業員の表情は総じて生き生きとしており、休憩時間を利用して自宅の買い物をしている人もよく見かける。半数以上が正社員である600人超の従業員の平均年齢は50歳。小売業では異例の高さであり、終身雇用を実現していることがわかる。

ただし、年功序列ではない。20代で各部門の主任に就くことも少なくないのだ。その象徴的な存在が、サンヨネの看板である鮮魚部門の各店主任を束ねるリーダーの服部広基さん。なんと26歳でリーダーに抜擢され、現在もまだ29歳。鮮魚部門に所属する80人の従業員の中でも下から4番目の若さだ。サンヨネで最も新しく大きな店舗である蒲郡店の主任も兼ねる服部さんの働きぶりを聞いた。

流れるような手さばきでカツオをおろしていく服部さん。「2歳の息子もうれしいことに魚好き。シタビラメのムニエルをバクバク食べています」

――19歳のときにサンヨネに入社したそうですね。

水産高校を1年で辞めてからは実家の魚屋を手伝いながら、夜は居酒屋で料理人として働いていました。魚は小さな頃から触っているので、目利きとさばくことには自信があります。

サンヨネは地元の市場では有名です。けっこうな量を買いますからね。「あんなに買ってどうやって売るんだろう」と興味がありました。自分が覚えてきたことが外でも通用するのかも知りたかったので、蒲郡店のオープニングスタッフに応募することに。採用されて、21歳で副主任になり、23歳で主任になりました。学歴や年齢は関係のない会社です。

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