東京は1週間が限度。愛知で平和ボケしてます 出稼ぎ美容師、オーストラリア→東京→豊橋へ

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昨年夏から愛知県で暮らしている。埼玉県で生まれ、東京都で住み働いてきた僕にとって、愛知県の印象は「たまに日帰り名古屋出張するところ。トヨタとブラザーの本社がある。味噌煮込みうどんは食べた記憶がある。女性の化粧が濃い」程度だ。観光で訪れたい、住みたい、と思ったことは一度もない。福岡や熊本なら行きたいけれど…。

縁もゆかりもない愛知県蒲郡市に引っ越した理由は、結婚相手の勤務先が愛知県の三河地方にあるから。それだけだ。ガマゴオリ市、あなたは聞いたことがあるだろうか。低山と海に囲まれた人口8万人ほどの小さな港町で、主要産業はロープとみかんと観光、らしい。

フリーライターは電話とパソコンさえあればどこでも働けると思われがちだが、そんなことはない。魅力的な人に直接会って話を聞くのが仕事の中心だし、気軽に情報交換できる知人も必要だ。僕の場合、ほぼ唯一の趣味は会食なので、妻以外にも楽しく飲み食いできる友だちが身近にほしい。だから、平日の半分ぐらいは東京で遊びながら取材をし、週末前後は愛知に戻って原稿を書くという「ゆるい週末婚」を続けている。

「個」が醸し出す地方の魅力

自宅では寝るだけの生活になるかもしれないと不安を感じながら暮らし始めてみると、意外に住み心地が良いことがわかってきた。人ごみが少ない、住居費が安い、自然豊かといった地方暮らしの利点はもちろんある。それ以上に、仕事も遊びも好き勝手かつ熱心に取り組んでいる若い世代がいることが非常な喜びだった。

ほとんどが人づての紹介だ。僕の友人には愛知出身者がなぜか多い(妻もその一人だ)。「愛知に引っ越したけど友だちがいない。いい店も知らない」と東京で嘆いていたら、親切にいろいろ教えてくれた。「いいなあ。オレもいつか愛知に帰りたい」というコメント付きで。いつかじゃなくて今すぐ帰って来てよ…。

全国から人が集まる東京のようにユニークな人が「ゴロゴロいる」わけではないけれど、愛知県という地方都市にも「探せばいる」のだ。人口密度が低い分だけ一人ひとりとの出会いを大切にできる気もする。

本連載では、筆者が暮らす愛知県の個人に会いに行く。どのように働き、どんな暮らしをして、何に喜びを感じているのだろうか。地元で好きな場所はどこか。東京にはどのような思いを持っているのか。

〇〇維新の会など、地方の復権を求める動きが盛んだ。しかし、名物政治家や人気タレント、名所、特産品の紹介だけでは本質は伝わらない。地域の力とは結局のところ人の力だと思う。無数の個人が楽しく働いて生活しなければ地方の活性化などありえない。元気な地方(愛知県)の姿を個から見ていきたい。

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