名古屋で10年働いている東京出身の知人と久しぶりに再会し、仕事がらみで会食をすることがあった。僕は名古屋駅前の居酒屋を予約したが、知人によると名古屋の中心地は今でも「栄」なのだという。会計を済ませると、気遣い上手の知人は「ご馳走になったから、2軒目は私が出します。女子大のワインバーに行きましょう」と誘ってタクシーを拾ってくれた。ん? 女子大で飲むの?
知人によれば、名古屋には「女子大小路」という地域があるという。女子大があるわけでもなく、その手の風俗店が集中しているわけでもない。中区栄4丁目一帯を指す通称らしい。
「錦三で食事して女子大で飲み直す。名古屋のサラリーマンなら1度は経験したことがあるコースです。というか、錦三と女子大だけ知っていれば問題はありません。狭い街ですからね」
知人は淡々と教えてくれた。なお、「錦三(きんさん)」は中区錦3丁目一帯を指し、名古屋随一の繁華街だ。女子大小路から徒歩10分で行ける。今度からは錦三で1軒目を探そう…。
タクシーを降りると、スナックなどが入る雑居ビルが立ち並ぶ通りに来ていた。エレベーターで5階まで上がり、重い扉を開けると高級感漂うワインバーだった。
ジーパンとダウンジャケット姿で来てしまったことを若干後悔したが、飲み始めると肩肘張る必要はないことに気づいた。ワインの知識などは不要で、少しエッチな笑い話をしながらおいしく楽しく飲める店だ。聞けば、店長の島田智子さん(41)は僕と同じく埼玉県出身で、会社の転勤で名古屋に来て結婚して愛知県人になったという。なぜか共感を覚える。
「2年前に離婚しましたけどね。今はシングルマザーです。取材? もちろん、いいですよ。隠すことは何もありませんから」
20年前に愛知にやってきて、現在は腰を据えてワインバーを経営している島田さんの物語を聞くことにした。
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