――アパレル企業で正社員をしていたキャリアは生かさなかったのですか?
その頃には同期入社の人たちが芸能人のスタイリストになっていたりと、出世をしていました。私にはアパレルでやっていく道は見えなかった。改めて始めるならば、自分は何をやりたいのかをちゃんと考えてやらなければと思ったんです。
行きついたのがワインバーの経営。「ゼットン」(名古屋発祥の飲食店グループ)や「ドンジュアン」(名古屋市東区にあるダイニングバー)など数店舗で修行しながら開業資金を貯めました。クラブでホステスをしていたこともあります。2007年にオープンするまでに9年もかかりました。
名古屋は自分でアンテナを出してれば面白い人に会える
――嫌だった名古屋は好きになれましたか。
はい。情報や人は東京に比べると圧倒的に少ないけれど、自分でアンテナを出して発信すれば面白い人に会えるんだと、お店を始めてから実感しています。ある上場企業の社長さんにぜひ会いたいなと思っていたら、知り合いがお店に連れてきてくれました。名古屋を拠点に日本全国や世界に進出している立派な経営者の方々と出会えたおかげで、働く場所はどこでもいいんだと教えてもらえた気がします。
私は4人兄弟の末娘でお父さんが大好きなのですが、その父からは「お前は二度と戻ってくるなよ。住んでいる土地を愛して、周りにいる人を大事にしなさい。それができなければ商売が成り立っていかないものだ」と諭されました。実際、この店を始めてからは東京に戻りたいとは思わなくなりました。覚悟を決められたんです。
――営業時間が21時から翌1時半までと短いですね。他のお仕事もされているんですか?
よく言われるんですが、ほかの仕事はしていません。開店当時は小学校2年生で、今もまだ中学生の娘が寝てから出勤しています。仕事も真剣にやっていますが、娘との時間を割いてまで働こうとは思いません。仕事は誰かが代われても、母親は私しかいませんから。
ありがたいことに娘にも自立の心が芽生えてきています。高校を出たら一人暮らしをするらしいです。寂しくはありませんよ。自立することがいちばんの親孝行じゃないですか。私も自分のことを精いっぱいやれるので、仕事の比重を大きくしていくつもりです。
今でも4時間半の営業にしては売り上げがいいんですよ。税務調査に来た人から「5年間でこれだけ売り上げが伸びているのはこの店ぐらいだよ」なんて言われて、税金をたくさん払わされました。
人気の秘密は??
――人気の秘密は何だと思いますか。ワインやチーズは確かにおいしいけれど……。
私はワインで第一線に立つ気は全然ありません。名古屋でも1本10万円以上するワインを出しているお店はありますが、うちは高くても2万円です。この小さな場所でよりクオリティを上げていきたいという気持ちはありますけどね。
うちはすき間産業なんです。おいしいワインは置いてあるけれどウンチクは言いません。大宮さん、男目線でぶっちゃけトークをしてもいいですか? お酒は美人のお姉ちゃんをはべらせて飲むのがいちばんうまいんです。といっても、うちはクラブではありませんし、お酒の質も譲れませんよ。でも、ホテルのバーみたいな固い雰囲気じゃない。ちょっとエッチな気分になりながらおいしいお酒を飲むのが楽しいと思うんです。
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