女を使えない企業が、世界で戦えますか? 上野千鶴子先生に聞く、日本企業と女の今

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そりゃ、夫がいなくなると、たいていの女は経済的に苦労はするよ。その代わり、何もやってくれない夫への不満やストレスからは解放されるからね。

人生の勝負は、短期では決まらない

――では、最初から、追い詰められたときに救ってくれる男を選びましょうという話ですか?

いないわよ、そんな男。今の社会で、そんな男は育っていない。だから、命懸けで男を変えるしかない。そうしないと、全部、子どもにハネ返ってくる。子どもは見ているもの。抑圧された母親の姿を。夫婦関係を。空洞化した夫婦に育てられた子どもに全部、ツケがくるわ。私は、そんな子どもをたくさん見てきたわよ。

――どんなツケが子どもに来るのですか?

成績はいいけど、メンタルに問題を抱えるとか。家庭にストレスがあって不全感を抱えている母親は、子どもにのめり込みます。そして、子どもがいい大人になっても、干渉する。子どもは母親思いだから、ましてや母親が不幸だと知っているから、けなげに応えてしまう。でもそのしわ寄せは全部心とカラダに来ます。

――子どもにツケがくることだけは、すべての親が避けたいはずです。

そのためには、まず自分がハッピーになること。ハッピーじゃない母親は、絶対にハッピーな子どもを育てられないよ。でも、今の女は、仕事も家庭も両方テンパっている。

――まず、自分をハッピーにするためにすべきこととは?

両立が難しい職場の問題は、個人の問題ではなくシステムの問題なのだから、「私はどうしてできないんだろう」と自分を責めないこと。それと、さっき言ったとおり、女同士がもっと共感して連帯していないのは寂しいわね。理解してくれる仲間がいれば力が出るから。

最後に、人生の勝負は短期では決まらないということを認識してほしい。自分だけ抜け駆けして出世したって、仕事を優先し過ぎたツケが子どもにくるかもしれないし、会社だってあなたの貢献に報いてくれるとは限らないのですから。人生の後半になってから、自分の人生、悪くなかったなあ、と思える時間を過ごしてほしいですね。
 

(撮影:今井康一)

佐藤 留美 ライター
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