女を使えない企業が、世界で戦えますか? 上野千鶴子先生に聞く、日本企業と女の今

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――ノマド的な生き方ということですか?

別にフリーランスになる必要はない。安定雇用を持って、定職定収入があることは、ものすごくいいことだから。ただ、そこに必要以上にコミットメントしないことね。アフター5に、別の仕事をやるとか、ウィークエンドビジネスをやるとかね。

――それは、企業から、サボタージュだと思われませんか?

会社とは仕事の売り買いという契約は果たすのだから、サボタージュでも何でもないわよ。私が言いたいのは、ひとつの組織に自分の運命を預けない、会社と心中しないということ。リスク分散しなさいということよ。

そこに妻への尊重、愛はあるのか?

――会社がダメになったときでも収入を確保する手段を見つけろということですね。一方、子育てについてですが、夫婦共働きでも、どうしても妻側の育児負担が多く、その点で悩むワーキングマザーが後を絶ちませんが、何かアドバイスをいただけないでしょうか?

エリート女の泣きどころは、エリート男しか愛せないってこと(笑)。男性評論家はよく、エリート女は家事労働してくれるハウスハスバンドを選べなんて簡単に言うけど、現実的じゃない。

――まさに、そうだと思います。女性は、尊敬できる男性じゃないと、なかなか、結婚する気になれません。

尊敬できる男しか愛せないのは仕方がないし、いいんじゃない? ただ、自分も相手に同じように尊敬してもらえばいいのよ。

――尊敬してもらう、ですか?

そうよ。夫婦で尊敬し合ったらいい。尊敬されるって、大事にされるっていうこと。でも、男って超鈍感な生き物だから、自分が今、妻から受けている恩恵をデフォルトだと思っているのよね。帰ったらご飯ができているとか、子どもが勝手に育っているのは、「当たり前」だって。そこに、女がどれだけコストを払っているかをわかってない。

それは、言って伝えないとわからないのよ。私だって、昔、男と住んでいたとき、言ってたわよ。「アンタに飯が用意されるのは、アンタに愛情がある間だけだから、感謝しろ」って(笑)。

――では、伴侶にはきちんと、自分がどれだけコストを払っているかをきちんと伝えなさいと。

だって、日常生活って日々の交渉でしょ。日々の交渉の中、どれだけ自分が相手に譲歩して、相手も自分に譲歩するかじゃない。ましてや、子育てが始まれば、死闘が始まるわけでしょ。そこで、相手だけが自分の利益を追求したとする。それは、ハッキリ、自分は尊重されていないということじゃない。

尊重されていないということは、愛されていないということよ。というより、妻や子どもを愛するより、自己愛のほうが強いってことかしらね。あなたたち、そんな男と、一緒にいられる? だから私の世代の仲間たちは、早々に夫をあきらめて、結婚をキャンセルしましたよ。

――キャンセルですか?

離婚のことよ! 人生でいちばんと言っていいほど大変な子育てのとき、相手が何の手助けもしてくれないなんて、許せないじゃない。自分がいちばん追い詰められたときに関わってくれない男なんかとセックスできるかって話よ(笑)。

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