なぜ日本の人事はこんなに「アナログ」なのか 「HRテック」の普及がなかなか進まないワケ

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さらに上司と部下が行うコミュニケーションからみえてくる部下のパーソナリティ情報も、上司の頭の中で完結しているケースがほとんど。人事評価で決定されたAとかBなどの点数は保存されますが、それ以外の詳細な情報は残っていません。でも、そのことについての問題意識が低く、データを蓄積することに抵抗感のある人事部が意外にも多いのです。

その理由の1つが、頭の中にある情報のデータ入力がかなり大変で面倒と感じているから。さらにいえば、頭の中にある情報の開示で組織内における人事部の優位性が下がるとの危機感があるからかもしれません。もちろん、すべての会社に当てはまるとは言い切れませんが、人事部がHRテック導入を阻んでいるケースは相当数になると筆者は感じています。

一方で、経営サイドは人事情報を活用して、戦略的な人事がしたい。だからHRテックを活用したいと考える会社が多くあります。また、取材していくと部下のマネジメントでHRテックを活用した上司も、少しずつではありますが、増えつつあります。

現場の人々にも役に立つ

取材した広告代理店で管理職をしているDさんは、今風といいますか、何ごとも説明を求める部下に対して納得性を高めるために、エビデンス=履歴が必要と感じていました。たとえば、

「仕事の進捗は行動管理表に基づいて確認をしましょう」

とルール化しています。口頭だけの指示を極力避けて、書き残すようにしています。イマドキの部下はマイクロマネジメントを望む傾向が強く、書き残す習慣は負担というよりも責任感を醸成するようです。当然ながら書き残した管理表はエビデンスになります。どうせなら、使いやすいほうがいいですし、管理職も管理するマネジメントツールとしてHRテックのサービスは有効なので「早く、そうしたサービスを導入してほしい」となります。

職場の上司と部下、経営陣も導入を望んでいるHRテック。今年は続々と新サービスが日本でも登場していくことが予想されます。

ちなみに最近、採用における選考面接で「動画」を活用したサービスの導入が急激に増えているようです。ただ、タレントマネジメントのような人事部長の頭の中を開示する必要のあるサービスは、意外と導入が進まない傾向がみえます。人事部の決断がHRテック普及のカギをにぎっている気がしてなりません。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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