人工知能が出す「最適解」が人事担当者を救う 退職率をAI人事で引き下げることができる?

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人間を判断するという絶対的な正解のない仕事だが、AIは迷いなく1つの解を突きつけてくる(写真:YUMIK / PIXTA)
人手不足を背景に、職場で人工知能(AI)を取り入れる動きが始まっている。経済産業省は人工知能を人材採用や人事研修に活用することを促しており、2017年にはソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」が採用面接をする「AI面接官」も話題になった。
退職率の高さという問題を抱える医療事務業界でも、人工知能を活用する試みが始まった。人工知能をスタッフの面談に活用して、その悩みや不安を探り当て、退職をくい止めるのだと言う。はたして、人工知能に人間の心は読めるのだろうか(当記事は、『人工知能の「最適解」と人間の選択』(NHK出版新書)の一部を抜粋・再構成したものです)。

退職しそうな社員を、人工知能が見つけ出す

医療事務業界における退職率が高い理由の1つには、勤務場所がいわゆる病院の中という限られた空間であり、その中でのコミュニケーションや対人関係の難しさが影響していると考えられる。ミスが許されない職場、という環境が与えるストレスも大きい。

全国で約2万5000人の医療事務スタッフを擁するソラスト社は、地域中核病院など大きな病院の受付や会計などの業務を受託している。毎年、新たに約5000人を雇用しているが、それでも年間約2000人が退職しており、高い退職率の引き下げは急務だ。これまでもさまざまな対策を行っている。退職率が40%と高い、入社後1年以内の新入社員に対する面談は1年に7回以上行い、結果はすべてデータ化され、分析にかけられている。

しかし、このような対策をしていても、退職しそうな人を面談では見抜けないのが課題だった。

ソラスト社採用企画部部長の菊池雅也氏は次のように話す。

「面談に際して、社員に今感じていることを書いてもらう面談シートというものがあるのですが、コメントの分析がなかなか難しいのです。特定のキーワードはピックアップできるものの、その裏に潜んでいる社員の本当の気持ちを把握できないという問題がありました」

そこで、面談シートの文章から退職の可能性の高い社員を、人工知能によっていち早く見つけ出すシステムを導入することにした。退職の予兆があると人工知能が判断した社員を手厚くサポートし、退職者を1人でも減らすことが目的だ。

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