人工知能が出す「最適解」が人事担当者を救う 退職率をAI人事で引き下げることができる?
人間の心の「機微」と情報量の単位である「ビット(bit)」を組み合わせた、キビットという名称には、「人間の機微を理解する人工知能」との意味が込められているという。「基本的には人間と機械は違う」と断りつつ、武田氏は人工知能をオフィスに導入する際のポイントについて説明してくれた。
「出発点として、人間と同じように人工知能に判断の理由を求めるのはなかなか難しいということがあるでしょう。人間は因果関係で物事を考えがちですが、機械は相関関係でとらえます。重要なのは、人工知能の判断の単位を、なるべく人間が考えているものに合わせてあげるというか、人間がもともと持っている判断になじむようなシステムにすることだと思います」
「軽量な」人工知能がオフィスをサポートする
キビットは、処理能力がそれほど高くない普通のノートパソコンでも、少量のデータから学習が可能という点に特徴がある。短いコメントから退職の可能性を的確に判断したことからもわかるように、キビットが読み込むデータはそれほど長い文章である必要はなく、基本的には100~200文字程度の情報があれば十分だ。しかも学習に要する時間は5~10分程度で、すぐに数千~数万件のデータを処理できるようになる。それでいて人間にはとらえきれない、文章の隠れた共通点を見つけ出すことが可能だという。
「われわれのシステムにおいては、教師データ自体をたくさんつくる必要はありません。大事なのは、人間が良質な判断を行い、それに見合ったデータがそろっているということで、むしろ量より質ということですね」
量より質。数年前までは「ビッグデータ」という言葉がもてはやされていた。しかし現在は、少なくともビジネスの現場においては適正なデータを用意できるのかが、ポイントになっている。
現在、ディープラーニングが脚光を浴びているが、実際はもっと「軽量な」人工知能で解決可能な問題が多いのが、その理由だ。フロンテオ社でも用途に応じてディープラーニングを使った開発も行っているが、多くの企業にとって、数千から数万以上の学習データや莫大な計算資源を必要とするディープラーニングを導入するハードルは高い。そこで力を入れているのが、ITに詳しくない人でも理解しやすいシステムを、比較的安価にかつ幅広く活用できるようにすることだ。
「われわれの特徴は現場に根差しているところにあります。より実用的なシステムをつくるということに関しては、かなり工夫しながらやっています」
もう1つ、重要な点がある。ディープラーニングは基本的に人間の介在を不要とし、人工知能が判断も含めて課題解決を行うのに対し、キビットはあくまで人間がかかわることが必要であり、判断するのは人工知能によってサポートされた人間、というところにある。
「人の代わりに人工知能を使うのではなく、人と人工知能の優れた能力を融合させ、人のサポートに人工知能を使うことを考えています。人工知能自体に意思があるわけではありません。『こういうふうに業務を改善したい』という明確なビジョンの下で、どう人工知能を活用していくか検討することが重要だと思っています」
むやみに人工知能を使おうと導入を進めても、おそらく人工知能に振り回されて終わってしまうに違いない。しかし、ソラスト社での試みのように、人工知能は実際にビジネスの現場で起こっている課題を人間と一緒に解決し、生産性を上げていくための道具として浸透しつつある。キビットの広がりはそのことを雄弁に語っていると言えるだろう。
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