労働人口減少で、物価は上がる可能性がある 皮肉にも忘れた頃に「貨幣数量説」が働くのか

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日銀が国債を買い入れる状態がいつまでも続くと考えるべきではない(撮影:編集部)

黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任して異次元の金融緩和を始めた2013年春から、すでに5年を超える年月が経ち、新たな副総裁に雨宮正佳、若田部昌澄の両氏を迎えて2期目に入った。

2%の物価上昇率目標については、異次元緩和の開始当初に2年程度で達成するとしていたが、その後、政策委員の予想する達成時期が6回にわたって先送りされた後、今年4月の金融政策決定会合で公表された「展望レポート」(経済・物価情勢の展望)からは達成時期についての記述そのものが削除された。

日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」によれば、民間エコノミストによる消費者物価(生鮮食品を除く総合)上昇率の見通しは、消費税率引き上げの影響を加えても2019年度平均で1.4%、増税の影響を除くベースでは0.9%にとどまっており、目標の達成がいつになるのか、メドは立っていない。

黒田日銀は金融政策で、「量的・質的金融緩和」、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と次々に新手を繰り出してきたが、目標の達成は危ぶまれている。このため、財政政策によって日本経済をデフレから脱却させるべきだという主張が再び勢いを増しているようだ。

今のところはインフレの兆しは見えないが

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日本では、大幅な財政赤字が続いているにもかかわらず、国債による財政資金調達が困難になったり、著しいインフレが起こったりするといった問題はこれまで発生していない。このため、政府債務残高膨張に対する警戒感は薄くなる一方だ。

2019年度には消費税率の引き上げが予定されているが、その延期や凍結が主張されるだけではなく、逆に減税によってデフレ脱却を図るべきだという声すら上がるようになっている(「消費増税『凍結を』自民若手 黒字目標撤回も、政府に提言へ」、5月2日付、日本経済新聞電子版)。

異次元の金融緩和でデフレから脱却できるという主張を支えているのは、「貨幣数量説」と「合理的期待形成説」に基づくインフレ期待の2つだと考えられる。インフレは貨幣現象であり、インフレ率の目標が達成されるまでおカネを供給し続けることを日銀が実際の行動によって示せば、消費者も企業も将来どこかでインフレが起こると予想するようになって、経済行動を変えるので、実際の物価上昇につながっていくという考え方である。

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