スーパースター企業を生み出す無形資産投資 寡占化や格差の拡大への社会的対策も必要だ

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IT分野でのスーパースター企業の興隆で無形資産への投資が増えている(撮影:今井康一)

グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどの、いわゆるスーパースター企業は急速に成長して市場での存在感を高めているが、これが先進諸国で所得格差が拡大する背景になっているともいわれている。

これら一握りの企業が市場を占有するような経済構造を作り出している原因の一つは、企業の投資の重点が形のある物から目に見えないモノへと移っていることだ。企業の設備投資と言えば、工場の機械設備やホテルの建物といった実物資産を思い浮かべるが、企業経営では、研究開発やソフトウェア、情報収集などといった形がなくて目に見えない無形資産への投資が重要性を増している。

「費用」から「投資」へ、GDPに計上

こうした企業の投資活動の変化に対応して、GDP(国内総生産)の定義も変化している。

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かつては企業が行う新技術や新製品の研究開発のための支出や大規模なコンピュータソフトの開発は費用として扱われ、大学や研究所で行われる研究も消費やその年に行っている生産のための費用として扱われていた。しかし、国連が定めているSNA(国民経済計算体系)の世界標準では、こうした無形資産の形成を投資としてGDPに計上するように基準が変更されている。日本では基礎的な統計調査が不十分だったために対応が遅れたが、2016年に基準年の改定が行われたのと同時に研究開発費の計上など国際基準との整合化が行われた。

企業の設備投資や政府が行う公共投資など国全体が行っている投資である「固定資本形成」には、無形資産への投資を計上した「知的財産生産物」という項目が新設されており、ここには「研究・開発」、「コンピュータソフトウェア」、「鉱物探査・評価」が含まれている。知的財産生産物が、毎年の総固定資本形成(投資)に占める割合は、1994年の12.2%から2016年には23.0%に上昇し、この間に固定資産(ストック)に占める割合も6.2%から8.1%へと上昇している。

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