日本では、企業の資金調達は金融機関からの融資という形で行われることが多いが、融資では投資の成功・不成功に関わらず、一定の元利の返済が求められる。成功すれば大きな利益があるが、その確率が高くないというタイプの無形資産への投資にはこの方法は向いていない。事業が失敗すれば出資はゼロになってしまうが、大成功を収めれば大きな利益を得られるという出資による資金調達が重要性を増してくるだろう。
このため、無形資産への投資がより重要になっていくと、自己資金が豊富で外部からの資金調達が容易な巨大企業がより有利になりやすく、寡占化が進みやすいと考えられる。データ資源への投資ではグーグルやアマゾン、フェイスブックといった米国のネット大手や巨大市場を背景とした中国の企業が優位に立っているが、こうした状況がさらに明確になって行く可能性が高い。
無形資産からの収益にどう社会的負担を課すか
巨大企業が世界市場を支配するようになるという可能性に対して、各国政府が協力して適切な対応を行ったり、小規模な国の権利の保護を行ったりすることが必要になるだろう。ブランドやノウハウ、特許、著作権といった無形資産に対する権利は、土地や建物などの実物資産の所有権に比べて新しく、どう扱うべきか社会は経験不足だ。政府は、公共財の性格が強い基礎研究や、権利保護や適切な社会的利用についてのルール作りなどに、より大きな役割を果たすべきだ。
また、無形資産の所有権を確立することは、一方で、インターネット上のサービスで成功した人々のように、これまでの実物経済における成功に比べてはるかに短期間で巨額の富を手に入れる人を生みやすくし、社会の格差を著しいものにする恐れが大きい。こうした成功は傑出した才能と努力の賜物であることは確かだが、運の要素や事業の成功を可能にした社会基盤の貢献も大きい。巨大企業の利益や無形資産投資からの利益に、適切な社会的負担を課す方法を、国際社会が協力して研究することの必要がいっそう高まっている。
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