スーパースター企業を生み出す無形資産投資 寡占化や格差の拡大への社会的対策も必要だ

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固定資本形成の対象となるものは、大きく、「住宅」「住宅以外の建物・構築物」「機械・設備」「防衛装備品」「育成生物資源」「知的財産生産物」に分けられている。2016年でも「機械・設備」や「住宅以外の建物・構築物」への投資が多いが、無形資産への投資は「研究・開発」と「コンピュータソフトウェア」への投資を合わせると住宅投資を大きく上回る規模となっている。

こうした支出が費用や消費として扱われるか投資とされるかは、できあがったものが長期間(複数年)にわたって生産活動に使われるかどうかで区別されるのが原則だ。

価値評価の難しい無形資産

製薬会社が新薬を開発した場合には、その医薬品は長期間にわたって生産・販売され続け、製薬会社に膨大な利益をもたらす。新薬となる新しい化学物質の構造や製法、医学的な効能や投与方法といった知見は、長年にわたって経済活動で利用されるものだ。大規模なソフトウェアも長期間にわたって企業の事業効率を高めて利益に貢献する。学術的な発見ともなれば、世界全体の知識として人類が生き残っている限りは役に立つはずだ。形は無いとは言うものの、企業の生産設備や国や地方自治体の作る道路や橋と同じように投資として扱った方が適切だと考えられるようになった。

知的財産生産物のような無形資産が投資に計上されてこなかったのは、単にその重要性が十分認識されておらず統計として集計するための情報が不足していたことだけが理由ではない。そもそも工場の機械設備などの実物資産に比べて、評価が非常に難しいからだ。

たとえば、企業会計でも工場の機械設備などを資産として計上することは昔から行われてきた。こうした資産が生産増加に寄与するのは間違いなく、生産を続ける限り利用できるのは明らかだ。建物や自動車などのように汎用性があるものは、企業が生産に使うのを止めた場合に売却も可能で市場価格もはっきりしている。まだ建設中の段階でも設備を増強するための費用を資産として計上することにあまり違和感はない。

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